フォーラム神保町第13回 緊急会見フォーラム! 『スペシャル対論!! 参議院改革!地域主義!アイヌ問題!』

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開催日時:5月17日 (木) 14:30〜

勉強会レポート

 佐藤優さんが司法の現状を嘆いた上で、「自分が書いている本というのは、人民法廷のための題材だと思っている。読者の人たち、メディアの人たちに判定してもう。国家による裁判所が唯一の裁判所じゃないと思う」とおっしゃっていたことが、一番印象的だっだ。

 社会に司法に対する疑念が広がってきたのは、佐藤さんや鈴木宗男議員が司法の実情を明らかにしてからだった。「(法廷で)真実を言えば『反省の情が皆無』という話になる」(鈴木議員)「判決理由でそこだけ正しい」(佐藤さん)というやりとりは思わず笑ってしまったが、無罪を主張していることが有罪の理由になるのならば、裁判自体を否定していることになるはずだ。だが、漫然とニュースに接 していると、そんな判決理由ももっともらしく聞こえてしまうからおそろしい。

 私事で恐縮だが、ネット上で報道してきたライブドア・ニュース(すでに閉鎖)の記者として、一連のライブドア裁判を担当してきた。検察側の主張だけ でなく、小さく扱われがちな弁護側の主張も大きく扱うなど詳報に努めた。先輩 ジャーナリストのアドバイスもあり、被告人質問の質疑応答もほぼすべてを掲載した。
「この事件は一体何だったのか」ということを判断するために、できるだけの情報を提供することが被告会社の報道部門に求められていることだと考えたからだ。すると、 電子掲示板やブログでは記事を引用され、新たな議論が展開されていった。それらは 必ずしも新聞・テレビでの論調とは同じものではなかった。読者が議論の材料を元に、世論を組み立てていく。民主主義の本来のあり方を見ているようだった。人びとがバイアスがかかっていない生の情報に飢えているのを肌で感じた。

 今回、アイヌ民族について講演された多原香里さんが「民主主義は多数決。少数者の権利や人権を守るためには、多数者の利益を担保しなければならない」と訴えておられた。近年の政治状況をみると、確かにそんな気がする。だが、アイヌ民族しかり、刑事被告人しかり、特定の少数者を不合理に扱ったり、窮地に陥れることでなんとか回っているような社会は、きっと社会全体としても窮屈なはず。そのことに多数者が想像力を働かせることは今の日本では難しいかもしれないが、人びとが生の情報を得ることができ、議論を交わしていけば乗り越えられない問題ではないと思う。

 物事を判断するための十分な情報を提供すれば、きっと世の中の空気が変わり、社会は動くと考えるのは楽観的過ぎるだろうか。絶望したくなるようなことばかりが見せつけられるが、そう信じることによってしか、ペンを握り続ける意味を見出せないでいる。

(元ライブドア・ニュース 徳永裕介)