現代政治の深層を読む小沢一郎の闘い方

▼バックナンバー 一覧 2010 年 1 月 19 日 山口 二郎

 石川知裕代議士が国会開幕直前に逮捕された事件には、私も仰天した。政治資金収支報告書の不備くらいで国会議員を逮捕するなど、非常識な話である。検察のねらいは、ゼネコンからの裏金の流れを裏付ける自白を取ることなのだろう。これまでマスメディアが伝えてきた疑惑が本物かどうか、私にはまだ判断ができない。
 ただ、小沢一郎幹事長の対応には不満がある。幹事長を一時休職し、裁判闘争に専念するとのことだが、そこで言う検察との闘いとは何なのだろう。ことは法律問題ではなく、政治闘争である。法律闘争ならば検察が立証責任を果たさない限り自分は潔白だと主張すればよいのだが、政治闘争においてそんな呑気なこと言っていては負けてしまう。
 この政治闘争は、国民が小沢と検察のどちらを信用するかという闘いである。この闘いに勝つためには国民の信頼を勝ち取ることが不可欠である。そのためには、小沢は土地購入に関する資金の流れにやましい点はないことを積極的に立証しなければならない。
 小沢個人の政治生命だけが問われているのではない。政権交代を実現した民主党が、これから日本の民主政治を前進させることができるかどうか、更には日本の政党政治の命運が小沢の行動にかかっているのである。
(編集者注・これは東京新聞に掲載された原稿を再録したものです)