フォーラム神保町「『秋葉原無差別殺傷事件』を徹底的に考える」

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開催日時:2010年 9月16日(木) 18:30〜20:30

加藤智大の友人として

 私は加藤智大の友人として、「秋葉原連続殺傷事件」を考え続けている。
一連のマスコミの報道により「負け組」「派遣労働者」などのワードが繰り返し伝えられた。たしかに加藤が事件を起こすひとつの要因として、事件直前の派遣労働の環境は彼の一連の行動に影響しているとは思ったが、それだけがきっかけとなったとは到底思えなかった。報道内容に違和感を感じた私は、直接マスコミに連絡をとり加藤について語るから、色々な角度から客観的に報道するように求めた上で取材協力をするも、実際には視聴率を見据えて加藤の暴力性を誇張する演出が施され映像化された。不信感を持った私はその後マスコミとの接触を避けて、独自に事件の検証をはじめた。

 今回勉強会に参加して、以前中島岳志先生が「秋葉原連続殺傷事件」について語っている文章を読んだことがあった。立場こそ違うが同じ事件を追っかけている者として先生が加藤という人物をどのように見ているのか非常に興味があった。多くの学者がインターネットの情報などを元にもっともらしい事を語るのとは違い、実際に現地に出向き取材、検証しているだけに、私の知らない空白の2年間のデテールが伝わってきた。ただし私がとても大切な事案と思っている部分を先生が語られなかったり、私自身今まで気がつけなかった新たな、発見があったのも事実で、今後も事件を語り続けようと思う私にとって有意義な話であったとともに、まだまだ情報は少なくこれからも様々な検証を続けていかなければならないと強く思った。

 恐らく加藤智大を理解することは一生できないと思う。何故なら加藤自身、自分で自分のことを理解しているとはとうてい思えないからである。だからこそ私は、加藤智大について一生考え続け、語り続けようと思う。理解はできなくても理解しようと考え続けることが、大切なことであると思うから。

(大友秀逸)


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