フォーラム神保町東郷ゼミ「ゼロからのイスラム 第2弾」 〜映像で観る「公開処刑されたアフガニスタン女性を追って」〜

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開催日時:2010年 8月30日(月) 19:00〜21:30

レポート

 講座の始めは今回の講師である玉本英子さんが監督された、アフガニスタンで公開処刑された女性を追ったドキュメンタリーが上映された。

 ドキュメンタリーの冒頭は、ライフル銃を持った者がいきなり女性の頭を打ち抜くという衝撃的なスタートだった。

 彼女はなぜ処刑されなければならなかったのか。

 処刑された彼女の罪は夫の殺人。その当時、アフガニスタンのタリバン政権下では夫を殺すという罪は死刑に値するもの。彼女の親戚、家族、近隣の人々も「死刑が妥当」と言及していた。彼女はなぜ夫を殺すにまで至ってしまったのか。

 当時、アフガニスタンでは内戦が激化。彼女も夫・子と共に家を追われ、避難生活を余儀なくされていた。ある日、避難生活を送っていた彼女であったが、夫の留守中に3人の男性に強姦されてしまったのだ。それをきっかけに彼女は売春を始め、夫以外の男性と深い関係を持つようになった。そのことが夫にバレてしまったという。

 このドキュメンタリーには、その当時のタリバン政権下での混沌とした社会が映し出されていた。

 私はこのドキュメンタリーを見て、夫殺しは賛成出来ないが、売春してしまった彼女の気持ちがわからないでもないと思った。家を失い、慣れない避難生活での強姦。夫にも言えず、何を支えに生きていけばよいのであろうか。女性として自暴自棄になるのは当然の心理である。そんな彼女が本当に死刑になるべきであったのか?とさえ私は感じた。

 またそれと同時になぜタリバン政権はなぜそこまで過激な戒律を作り出してしまったのか?という疑問も感じ始めた。そもそも私が知っているイスラムはアッラーに忠実で、和平の心を持ち、争いを嫌う人達であったからだ。

 上映が終わり、受講生の質問タイムに入ったとき、玉本英子さんは私たちこう言った「私たちが他国で取材するときは、自分たちのものさし(=価値観)は捨てなければいけない」と。

 私自身、イスラムの国で生活をした経験があったため、とても納得できる言葉であった。特に私たち日本のような先進国の人間は“先進国特有のものさし“を持って他国にいる人が多い。

 このため、闇雲にタリバン政権を批判することはできない。しかし、アフガニスタンにも女性はいる。処刑された彼女の気持ちを理解出来る人がだれ一人といなかったとは思えない。

 このドキュメンタリーを観てアフガニスタンの新たな一面を垣間見ることができた。私は西アフリカに住んでいたことがあったため、私の知っているイスラムはアフリカに限定されてしまうが、アフガンとは戒律や文化の異なったイスラム教を感じた。

 今回の講座は、講師である玉本英子さんのパワーを感じつつ、イスラム教の違う側面を発見できたたとても良い機会であった。

(日景三保子/看護専門学校)

※フォーラム神保町のサイト上で掲載された「レポート」は執筆者個人の意見であり、所属の団体や組織等の意見ではありません。

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