フォーラム神保町山口二郎ゼミ「菅『市民』政権の課題と世論」
勉強会レポート
1 政権交代と「幻滅感」
冒頭、政権交代は遠足同様、前日がいちばん楽しい、という例えからはじまった。
2009年の政権交代から鳩山首相辞任までの日々は、ある種の「幻滅感」を醸成する期間でもあった。この「幻滅感」に包まれることは、成熟した民主主義において不可避であるという。
「幻滅感」という言葉は、まさしく今を表現するにふさわしい。そして、この「幻滅感」が単純に自民党政権への揺り戻しを生み出さないように見えることが、日本の民主主義の成熟さを感じさせる。
2 政権交代の意義
(1)政治は可能性の芸術
自由で民主的であるからこそ、見えない壁がある。例えば、介護や子育ては、自由で民主的な戦後日本では、女性に過度の負担をかけている。この問題はかつて、政府に予算がない、法制度がこうなっているなどとして、物事が解決に向かっていかなかった。
政権交代は、こうした構造を崩していく。問題が解決に向けて、少しずつでも動き出していく。
(2)価値観の多元化と政策の可塑性
これまでの政治過程は会員制クラブのメンバー(政官財)のみが参加していた。会員制の政策決定過程クラブのドアを開くのが政権交代である。
子育てや失業(貧困)は、これまで個人の問題とされ、重要な課題とされていなかった。これまでクラブメンバーではなかった女性や若者などが抱えていた問題は、政権交代により公共的な課題として認知されるようになった。
だから、政権交代をしても会員制クラブを維持し、メンバーを自分好みでそろえようとする政治家は批判の対象となっていく。
3 今後に向けて
山口先生から、参考文献として『丸山眞男セレクション』(杉田編、平凡社2010年)及び『天上大風』(堀田善衛、筑摩書房2009年)の紹介があった。こうした文献を手がかりにして、今後の状況をとらえていきたい。
三宅 海(一橋大学 国際・公共政策大学院)
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