フォーラム神保町美意識無き政治家を選ぶ不幸〜衆院選を前にして今、考えること〜
勉強会レポート
美意識無き政治家を選ぶ不幸—– 衆院選を前にして今、考えること
いま、世の中が変わりつつある。それは誰もが感じていることでしょう。しかし世の中を変える素になっているのは何? そして、変わったあと未来はどうなるの? 私はそんな疑問の答えが見つかるかな〜と期待して、政治記者歴30年の岸井成格先生と元参議院議員の平野貞夫先生のお話を聞きにまいりました。講演では都議選で見られた有権者の新たな投票行動や宗教団体を背後に持つ政党の選挙応援の実態、首相になってはいけない人物像など、幅広い話題が出てまいりましたが、私が特に深く印象に残ったお二人の歴史の見かたについて以下に短くレポートします。
出会いのキーワードは古神道
冒頭の挨拶でお二人は「古いつきあいだ」とおっしゃいましたので、政治家と記者という関係かなと思いましたが、実はそうではないと言われました。昭和58年ころ、サンデー毎日の編集長をしていた岸井先生は、「日本にもピラミッドがあった」という記事を1年にわたって連載していました。連載された記事は大変な人気となり、日本に古神道ブームを巻き起こしました。平野先生は地元高知に伝わる独自体系の古神道に詳しく、それがきっかけでお付き合いが始まったということです。つまり、古神道を通じた友人ということでした。今でも会ったときは古神道の話で盛り上がるということです。
再生前の崩壊現象か、それとも一方的な劣化の進行か
お二人には10年、100年、1000年という長いスパンの中で現状を認識しようとする共通点があります。それは、お二人が古神道に精通されているということも関係するのでしょう。歴史は発生、成長、成熟、崩壊という4つのフェーズを周期的に繰り返すと見て、現在はそのフェーズのひとつだと捕らえる。そういう見方もお二人に共通しています。岸井先生の見かたは、現状は冷戦終結をきっかけとする崩壊の過程というものです。平野先生は西洋の制度を取り入れた明治維新以来の劣化(崩壊)の過程と見ています。おそらく岸井先生は100年周期で、平野先生は1000年周期で説明してくださったのでしょう。
伝統的な日本の政治体制
平野先生の意見は長老の采配で社会を維持するという古来日本が取ってきた政治手法を復活せよということです。日本と西洋の政治体制の違いは長老を中心とするか、教会を中心とするかということ。西洋の議会は、教会に似ているでしょう。それは建物が似ているというだけでなく、もとが教会だから。かつて教会は宗教的な場であり、かつ社会的な問題を決める場でもあったのです。その機能を分けたのが議会。だから聖書に手を当てて宣誓するし、議会でうそを言わないという文化もそれによるのです。一方、日本は明治になって西洋のまねをして議会の形式は輸入したけれど、実は長老による采配は続いていた。中曽根内閣まではそれが残っていたが、以降、長老が不在となり迷走が始まった。だから日本は本来あったそれを取り戻せばよいのです。心配しなくて良い。イギリス、カナダ、アメリカという民主主義のお手本のような国々も実は奥の院には政権交代してもそのまま居続ける人々が居て、時の政権の振り付けをしているのです。
日本の未来
岸井先生は冷戦の崩壊が現状を作っており、石油のピークアウトが未来を決めるという。冷戦構造のもとで日本はアメリカの傘の下に居ました。だから政治上もっとも重要なことは左翼政権を作らないことでした。かつて選挙における自民党候補の切り札は「国会に赤い旗が並び立ってもいいんですか!」という一言だったのです。国民もそれを支持していたので効き目がありました。しかしもうそれを言う人はいません。新しい時代が来る前に必ず崩壊というフェーズになります。いまは正に崩壊の瞬間。そして世界地図を塗り替えるような大きな問題が石油の枯渇。今年、石油の生産量が減産に転じた(ピークアウト)。もはや増えることは無く、枯渇へむけて進むだけ。産油国の対応は早く、産油国なのに原子力発電所の建設を急いでいます。大国は資源を囲い込もうと外交の重心を大きくシフトしている。さて資源の無い日本はどう対応するか。自然エネルギーや核融合など注目すべき技術が日本にはたくさんあるのに、政府には将来のエネルギー政策について総合的に検討するチームが無い。なにもしていない。自民も民主もエネルギー問題に無頓着といわざるを得ない。このエネルギー問題にどう対応するかで日本の未来が決まる。
(会社員/山口 政五郎)
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