読み物証拠改ざん事件をめぐる三井環・元大阪高検公安部長の告発状

▼バックナンバー 一覧 2010 年 9 月 28 日 三井 環

平成22年9月27日

大林宏検事総長殿
 

告 発 状

 

一 告発人 三井環(元大阪高検公安部長)

平成22年9月27日付告発状に本件告発状を追加して告発する。
 

二 被告発人

小林敬(大阪地方検察庁検事正)
玉井英章(同庁次席検事)
大坪弘道特捜部長(同庁特捜部長、現京都地検次席検事)
佐賀元明(同庁特捜部副部長)
林谷浩二(同庁検事)
坂口英雄(同庁副検事)
國井弘樹(同庁検事)
遠藤裕介(同庁検事)
高橋和男(同庁副検事)
牧野善憲(同庁副検事)
 

二 告発事実 

(1) 被告発人小林、同玉井、同大坪、同佐賀は共謀の上、平成21年7月13日頃、大阪地方検察庁において、前田恒彦検事が厚生労働省・上村勉元係長の自宅から押収されたフロッピーディスクの更新日時が「04年6月1日午前1時20分06秒」となっていたのに、これをほしいままに「04年6月8日午後9時10分56秒」と改竄したが、同検事が証拠隠滅の罪に当たる犯人であることを認識しながらこれを隠蔽したものである。
 
(2) 被告発人林谷、同坂口、同國井、同遠藤、同高橋、同牧野は、平成21年2月頃から同22年3月頃までの間、大阪地方検察庁において「取り調べメモ」を廃棄し、村木厚子事件の証拠を隠蔽するとともに公務庁の用に供する「取り調べメモ」を毀棄したものである。
 
(3) 被告発人小林、同玉井、同大坪、同佐賀は、共謀の上、上記告発人林谷ら6名が「取り調べメモ」を廃棄し、証拠隠滅ならびに公用文書等毀棄の罪に当たる犯人であることを認識しながら、これを隠蔽したものである。
 

四 罪名及び罪状

(1)につき犯人隠避、刑法第103条、第60条
(2)につき証拠隠滅、刑法第104条、公用文書等毀棄罪、刑法第258条
(3)につき犯人隠避、刑法第103条、第60条
 

五 告発の経過

(1) 新聞記事等を端緒とする。上記前田検事は、平成22年8月21日に証拠隠滅罪で逮捕され、現在勾留中である。
(2) 同人の供述によると、平成22年1月末頃、被告発人佐賀、同大坪に対して改竄した事実を報告し、同人らはその上司である被告発人玉井、同小林に深刻な事態になった旨を報告した事実が認められる。したがって、その頃被告発人は4名は前田検事がFDの内容を改竄した事実を認識していた。
 その改竄行為が村木厚子事件の証拠隠滅罪に当たることを十分に認識し、その犯人が前田検事であることを知っていたのである。
 しかるに、証拠隠滅罪の犯人である前田検事を故意に見逃して犯人を隠避した。
 その後も、前田検事は他の公判部検事とともに村木厚子事件の公判立会をしている。犯人が公判立会検事として職務を遂行していたのだ。
 また、平成21年7月16日、FDを返却しているが、通常は重要な証拠物を判決確定前までに返却することはない。初公判も開かれていない時期に何故返却したのか。どのような思惑があったのかを捜査で究明されたい。
 平成22年9月21日、朝日新聞は前田検事による改竄の事実を報じたが、それがなければ前田検事の証拠隠滅も被告発人の4名の犯人隠避も闇に葬り去られたのである。
 これは大阪地検幹部検事の組織的犯行であり、極めて悪質な事案である。大阪地検は上級庁である大阪高検の榊原一夫刑事部長、太田茂次席検事、中尾検事長に改竄の事実を報告するのが常であり、大阪高検幹部が改竄の事実を知っていたか否かが捜査の争点である。大阪高検幹部がこの事実を認識していれば、犯人隠避罪となる。
 最高検幹部検事についても全く同様であり、いつどのような経過で改竄の事案を認識したのか、捜査により明らかにされたい。
 
(3) 告発事実のうち上記(2)の事実については、平成22年9月22日付けで偽証罪により告発しているが、それが真相であっても、捜査の結果、究明できない場合もあるので、あえて本件を告発したものである、
「取り調べメモ」は、最高裁判例によって「公文書」であると認定され、最高検は高検、地検に適正な管理を通達している。検察官は判決の確定まで保管するのが通常である。
 取り調べ担当検察官が取調べの過程で作成するメモであるので、被告人に有利な事情も供述の変遷も記入されている。これらのメモによって検面調書が作成されるのである。
 取り調べ担当検事が証人出廷する場合の記憶喚起するメモでもあり、弁護人から証拠開示を求められる極めて重要な公文書なのである。この文書を廃棄することは、証拠隠滅罪とともに公用文書等毀棄罪にも当たる。また、被告発人ら6名は、証拠隠滅罪及び公用文書等毀棄罪の犯人である。被告発人佐賀、同大坪、同玉井、同小林は「取り調べメモ」を廃棄したことを知っていると認められるので、犯人隠避が成立する。この犯罪も捜査されたい。
 

六 まとめ

 以上の告発案件は、いずれも組織的犯行であって、逮捕、勾留、接見禁止を付して取り調べないことは、罪証隠滅のおそれが極めて強い。したがって、被告発人を逮捕、勾留して事実の真相を解明し、起訴されたい。
 

以上

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