フォーラム神保町第30回「テレビ報道の今とこれから」
概要
第二期を迎えたフォーラム神保町。二木啓孝さんから紹介され、発起人の宮崎学さんが挨拶。続き、登場したのは、世話人でもある田原総一朗さん。
いつもと異なりやや広い会場。マイクが無いため、声が聞き取れないところもあった。けれど、終盤には、参加者側にいた二木さんの質問をぐいっとさえぎり、切り返した。目の当たりにすると、「朝まで生テレビ!」のテーブルにいるかのような迫力だった。
同じく、政治取材のキャリアが長い、「NEWS23」キャスターの後藤謙次さん。ともに政治報道の手法は共通する。
この二人を講師に、第30回「テレビ報道の今とこれから」は100分に渡った。
田原さんは、番組づくりではプレッシャーを抱える、と語る。「サンデープロジェクト」でさえ、局内部での厳しいやりとりを経て、やっと番組として成立することがあるという。また、「朝まで生テレビ!」では、刑事裁判の被告人をテレビには出さない、という慣例を破った。
こういったこと、軋轢は、一般にネガティブで忌み嫌うべき、と考えてしまいがちだ。それを、田原さんは反転させ、やすやすとエネルギーとしているようだ。 「もめないと、番組づくりは面白くない。もめるからこそ面白い」。放送後には、当該の団体からは、むしろ、よくやったと言われた、とにこやかに語った。
後藤さんは、「『NEWS 23』は、ディリーニュースを重視するか、論を立てるマガジンなのか、二つの考え方がある」という。「ただ、政治ニュースに関していえば、長年の取材の経験から、一般の人に、日本の政治の構図、座標軸を示し伝えたい」。
テレビの政治報道には2通りある、と説明した。対象となる政治家と向かい合う。いわば刃をまじえながら迫る方法。もうひとつは、川の対岸から、遠距離砲を放つ方法。これは、自ら”被弾”することはない。そして、たしかに溜飲を下げる。視聴者にうけやすい。しかし、もちろん、後藤さんが目指すのは前者だ。
「サンデープロジェクト」を勇気ある番組と評し、同様に「この人がなぜ、今日、ここに来ているのか、それを番組では説明したい」という。
テレビには“生存視聴率”がある。いま、「NEWS 23」はやや苦戦している。この“視聴率”に関して、田原さんは、誤解されるかもしれないが、と前置きし、目指すところを言う。「テレビは、結果がよければすべてよし。ただし、生存視聴率を大きく上回ることはしない」。
ワイドショーなどは、いま、事件を多く取り上げているが、現状は退廃だ。事件を流せば、簡単に数字がとれるからだ。「NEWS 23」と同時間帯に放送する別のニュース番組では、政治を事件として取り上げている。政治を政策として取り上げていない。
わたしは、マスコミのつくりがちな悲観論には与しない。スタイルでいえば、「週刊金曜日」のようなつくりはしない。そっちは、簡単だから。いちばんラクだ。取材しなくていいから。先ほどのテレビでいうところの、とりやすい視聴率と同じだ。そうではなくて、やはり、政策論争をしたい。田原さんは力強く語った。
後藤さんも、「リスクをとって、コメントしたい。オレが責任を持つ」と、力を込める。そう言えるのも、番組の直前まで取材を一生懸命するからだ、という。
田原さん、後藤さん、ともに面白がっている。「面白がる」で語弊があるとすれば、まず、本人が知りたい、聞きたい、ということ。これをベースにおいていることを感じた。そして、その面白がり、興味こそが、なにかしら伝染する、伝わる。そのときにこそ、番組が活気づくのだろう。
政治を取り上げるにしても、政策をとりあげたい、ということで共通していた。後藤さんが得意の政治分野が混迷し面白くなりそうななか、経験、取材に根ざした、コメントを期待したい。
※ 勉強会で紹介のあった、後藤さん自身が記した、『「ニュース23」新米キャスター奮戦記』は、文藝春秋2008年3月号の186から194ページ。
(共同通信社 経理局 琴岡 康二)