フォーラム神保町山口二郎ゼミ「民主党政治の行方」

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開催日時:2010年 10月23日(土) 18:00〜20:00

レポート

1 民主政治をめぐる希望と幻滅

(1)オバマ政権の苦境

 大きな期待とともに発足しながらも、これまでのところ、オバマ政権は支持率を下げている。

 オバマ政権の運営の現在までの失敗は、政治の中での対立構造を設定できなかったことにあるという視点が示された。結果、前政権の負の遺産を一手に引き受けている格好となっている。

 オバマの医療改革は、米国史のなかでも画期的な取り組みであるはずだが、それさえも政権を不人気にする原因となっている。しかしながら、対立構造を設定するにあたり、軍産複合体とそれを支える金融界という構図は、オバマ政権では困難であろう。

(2)民主党の苦境

 日本の民主党政権は、オバマ政権の苦境を対岸の火事とはできず、この対立構造の設定に失敗していることが、現在の苦境を招いている。誰を代表するのかという理念が不明確であることは、結局誰からも積極的な支持を得ることができないという状況を生み出している。

 政党(Party)は部分を代表するものであり、「みんな」を代表するという言辞は、なにかを成し遂げる集団にはそぐわない。では、民主党は誰を代表しているのか、生活第一という自らが掲げた言葉がそれであったのだろうか。

2 ポピュリズム

 米国のティーパーティの台頭は、職業政治家の否定であり、一見すると、わかりやすい政治を提示する集団にも見える。しかしながら、自分たちにとっての利益を理解していない。

その典型がオバマ政権の医療改革の否定であり、自滅的なポピュリズムとも解される。

 日本の地方自治体では、ポピュリズムが台頭しつつある。裁判所の判決に従わない首長、議会を解散させようとする首長の存在は、これまではあり得ない政治家の姿である。

 市民と指導者が直接結びついて、政策を決定していくことは、一見効率的に見える。そして、地方自治体が首長と議会という二元制をとっていることは、迅速な問題解決を困難にしているようにも見える。

 では、職業政治家による政策決定よりも、市民目線というアマチュアリズムを中心に意思決定をしていくことは、どういった結果を生み出すのか。民主主義とは、選挙により選出された者に権力を付託することで、効率的な運営を実現してきた。当然に選出される者には高度な専門性がなければ、実現性のある意思決定は困難となる。専門性を否定して、アマチュアによる世論の支持におもねる意思決定は、まさしく衆愚政治と紙一重のところにあるのではないか。

3 今後に向けて

 講義後半は、質疑応答となり、参加者から熱心な質問が挙げられた。このフォーラムの醍醐味はこうしたバックグラウンドの異なる参加者からの質問、コメントにあると感じている。

 財政問題への質問に関連して、波頭亮『成熟日本への進路』(筑摩書房 2010年)の紹介があった。たまたま読了していたが、こうした新しい視点を得ることは、一人では難しい。

 わたしも先生にならい、こつこつとシングルヒットを積み上げていくことを続けたい。

以上

(三宅 海/一橋大学 国際・公共政策大学院)

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