誰が日本国家を支配するか ──石川知裕代議士とマックス・ウェーバー『職業としての政治』を読む。 第1回 はじめに

▼バックナンバー 一覧 2010 年 5 月 19 日 佐藤 優

 この連載では、衆議院議員の石川知裕さんと佐藤優さんが主宰する勉強会の内容をお伝えします。マックス・ウェーバーの『職業としての政治』(岩波文庫)を参加者で読み合わせ、権力の本質に迫っていこうという意欲的な試みです。権力行使の現場に身を置く国会議員も多数参加しています。現在進行形の問題と第1次世界大戦で敗北したドイツで発せられたウェーバーの言説がどう斬り結ばれるのか、お楽しみください。(魚の目編集部)
 
【石川知裕】
 
 今日4月15日で、東京地検特捜部に運良くなのか、悪くなのか、わかりませんが、逮捕されたのが1月15日ということで、3か月たちました。去年から佐藤優さんとは親交がありまして、西松建設事件で大久保(隆規、小沢一郎氏の元第一公設秘書)さんが逮捕されたあとに、私自身、鈴木宗男さんと同郷(北海道)ということで佐藤優さんのほうから、石川くんも頑張ってということで親交が始まりました。とくに今回の逮捕前にはたいへん励ましていただき、逮捕の当日まで電話をいただいて、いろいろご指導いただきました。
 
 そうしたなかで、政権交代ということが現実になって、われわれ自身も政治主導ということが本当にどういうことなのか、戸惑っているところではないかと思います。たまたま鈴木宗男さんの公判をやっている(東京地検特捜部の)副部長さんが、私の担当検事と同じ方なんです。私が逮捕されたあと、その方が私に言った言葉というのが、「コストをかけた政権交代をあなたはつぶしていいと思いますか、思いませんか」。それが私に投げかけられた言葉でありまして、副部長さんは細かい取り調べをほとんど行いません。禅問答のような取り調べでありました。
 
 政治主導とは言われているけれども、いったい、今、世の中を動かしているのは誰なのか。官僚なのか、ジャーナリストなのか、政治家なのかと。その問いについて、一番教えてくださる方が、佐藤優さんなのではないかと思います。優さんから教材として『職業としての政治』、これを読み合わせしていこうと。『私のマルクス』という、佐藤さんの著書がありまして、同志社大学時代に勉強会を開いて本の読み合わせをしていたということが書かれていました。また、昨日、魚住昭さんからインタビューを受けたんですけれど、これは『ナショナリズムという迷宮』です(石川さんが手に持って会場に掲げる)。この本もすばらしい本で、私は何回も読み直しています。佐藤さんと魚住さんの対談形式で、国家とは何か。アーネスト・ゲルナーなどを題材に考察されている本です。こうしたものを読んでいるうちに佐藤優さんの話を──佐藤さんとはよく電話したり、話をしたりしていますが──私ひとりではもったいない。多くの人にご参加をいただきながら、今の国家とは何か、政治主導とは何かということを、読み合わせしながら勉強ができればということで、今日から勉強会をさせていただくことになりました。
 
 早速、佐藤優さんからマックス・ウェーバーについてお話をいただいて、その後、読み合わせをしながら勉強会を始めたいと思います。宜しくお願いいたします。
 
【佐藤優】
 
 ご紹介にあずかりました佐藤優です。なぜ、この勉強会を開くのかというと、私が石川さんをサポートした理由の一つとはですね、石川さんに対するシニシズム(冷笑主義)が世の中にあったからなんです。これは検察もマスコミもそう。石川さんは北海道の山奥に位置する足寄の「田舎の秀才」だった。しかも金持ちの子供だろう。そのへんは鈴木宗男さんと違う。なぜならば、函館ラサール高校を卒業している。鹿児島ラサール高校ほどではないにしても、あそこは“受験刑務所”に決まっている。三年間でやる勉強を2年間でやって、あとは受験勉強だけを徹底的にやらされた。その調子で早稲田大学に入学したあと、就職しないうちに、早い段階で小沢さんとの縁ができた。小沢ゴンゾウ部屋みたいなところに出入りしはじめた。頭の中まで小沢一郎という筋肉が入っていて、自分で全く思考していない。こういうヤツに限って脆いから、ゴリゴリにやればポロッと折れる。そして(検察にとって都合のいい供述を引きだせる)自動販売機になる。こういうことなんですよ。
 
 今回私は作家生命を賭けて石川さんと付き合ったんです。作家生命を賭けてとはどういうことか。政治家の秘書をやっていれば言えないことはたくさんあります。ただし、言えないことと積極的に嘘をつくことは全然違うんですね。ですから言えないことは自分で処理しなければならない範囲で、そこには私は触れていません。ただ私、ひとつだけ彼に確認したことがある。「5千万円水谷建設からもらってるの?」もしあなたがそこのところに関して嘘をついているんだったら、はっきりとした形でなくてよいから示唆してほしい。僕も作家生命がかかっている。いままでのあなたを見ていて嘘をついているようには思えないんだけれども、そこのところだけ本当のことを知りたいんだと言いました。すると石川さんから「佐藤さんそれは絶対にないと。そんなことでやられるんだったら、一生かけてでも検察と戦わざるを得ない状況になってしまう。そこまで検察はひどいとは思わない」という答えがありました。
 
 それからカネの受け渡しの場所がどこだと思いますか。アトリウム(ティーラウンジ)だって言うんですよ。赤坂の東京ANAインターコンチネンタルホテルのですよ。人がたくさんいるところですよ。裏金渡すんだったら、どこかホテルの部屋でもとって、立ち会いに怖い人でもつけて渡すんじゃないかなと私は言いました。とにかく、こんなアトリウムでどこの誰が五千万円、しかも5千万円もらっただけじゃなくて、小沢さんに報告しないで着服したらしい。こんな話になっているわけですね。しかし、この辺も怖いんですよ。仮に石川さんが「僕がそんなことするはずないじゃないですかと。あったことは全部小沢さんに報告しています」と、検察官に言った瞬間に、「そうでしょう、政治資金報告書も全部報告していて指示を得ていたんでしょ」と言って、そこでまた有罪をとられてしまう。
 
 ですから言葉は難しいんですけれども、彼の頭に何も入っていなくて、小沢さんの指示通りにロボットのように動いているように書かれていたんですね。これに私は腹を立てたんです。かつての私が鈴木宗男さんのロボットだと言われていた。これと同じなんです。石川さんだって血も流れていれば、涙もあり、なおかつ小沢さんに対してもいろいろな思いがある。私は彼と付き合っていて小沢さんに対する心情的な思いは当然あるけれど、乳離れしている政治家だと見ているんです。
 今日、このなかにいらっしゃるのは必ずしも小沢さんに近い人だけではありませんしね、そんないろいろなことがあるから石川さんの人脈は面白いと思うんです。
 
 石川さんの話で面白かったのは、ひとりだけ信用できる新聞記者がいたんだそうです。日経新聞の記者だった。僕の場合は、三人信用できる記者がいたんですけどね、そのうちのひとりが、今日、ここに来ている共同通信の加藤(正弘)さんなんですけどね。檻の中にはいっていると細かくいろいろなことを説明している余裕はないんですよ。ですから、信頼している人には自分の好きな本を薦めたんです。それが私の場合は遠藤周作の『沈黙』(新潮文庫)だったんですね。
 
 石川さんの場合は遠藤周作の『悲しみの歌』(新潮文庫)だったんです。遠藤周作を読む感性のある人間なんだ。そしてその『悲しみの歌』というのは、『海と毒薬』(新潮文庫)という小説の中で、九州大学の生体解剖実験に関与した勝呂という医師のその後なんですね。スキャンダリズムの中で追われていくなかで、1時間の取材でどれだけのことがわかるのかというやりとりがある。そこのところを石川さんは新聞記者に読んでほしかったようです。そういうリテラシーは面白いと思う。
 
 さて、マックス・ウェーバーというのは、有名なんですが、実はそれほど読まれていないし、知られていない。それから読み合わせにするのは理由があります。読むという時に黙読を意味するようになったのは、わずかここ百年だけのことなんです。古語辞典を見ればわかりますが、江戸時代、あるいは明治の初期までいわゆる黙読を「見る」と言っていました。読むというのは書見台に本を置き、正座をして、声に出して読むことなんですね。それはおそらく言霊の発想と関係していると思います。声を出すことによってそこに魂が入ってくる。だから読み合わせることによって、いままで気づかなかったことに気づけると思います。
 
 それからもうひとつ。これは立花隆さんと対談している時に、立花隆さんの指摘で気づいたのですが、立花さんは、日本でマックス・ウェーバーをいちばん体得している政治家は中曽根康弘さんだと思うと言っていました。どうしてかというと、『職業としての政治』のなかで一番重要なのは、政治の要諦は目測である、ということに中曽根さんが気付いているからです。政治の要諦は目でどれだけの距離があるかを測る力だと。中曽根さんはウェーバーだとはあまり言わないけれど、これをよく使っている。中曽根さんに関しては前会った時にはすごく親しくなったように思うんだけど、次に会ったら非常に遠い人のように思う。何か膜のようなものがあって、あるところ以上に人を近寄せないのだと多くの人が言います。これは私が見ていた中では、橋本龍太郎さんにあるように思いました。そして小渕恵三さんにもありました。おそらく小沢さん、鳩山さんの中にもあると思います。特にトップのポスト、あるいはそれに近いところに行く人というのは、努力とか合理性だけでは進めないところがあるんですね。そのへんをウェーバーは目測というかたちでうまく表したのではないかと思います。
 
 ウェーバーという人は大学の先生も一時やっていましたが、ひとことで言うと変人であります。他人とのコミュニケーションがきちんとできない。そして書いているものは基本的に学術論文ですし、それから日本でウェーバーというと、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』のせいか、宗教倫理の専門家と思われていますが、あれは、ウェーバーと同じアパートに住んでいた、エルンスト・トレルチという、この人は哲学者であり、神学者であり、歴史学者であります。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は、トレルチの著作をほとんど援用しているわけで、彼自身のオリジナリティーはほとんどないんです。ところが世の中にわかりやすい言葉で学術的な研究成果を説明する才能がありました。ジャーナリスティックな人だったのです。
 
 さらにもうひとつ言わなければなりません。ウェーバーの影響はおそらく、アメリカやドイツやイギリスよりも日本のほうが圧倒的に強いです。ウェーバーとマルクスの影響がこれだけ強い国は世界でないと思います。それから日本発の影響が東アジアに及んでいます。中国は社会科学や数学の基礎体力がまだ弱いんですね。日本語に訳されたものから再翻訳して中国のひとは勉強しているところがあるんです。その影響があって、中国や韓国でも日本経由でウェーバーの影響が強いのです。
 
 じゃあなぜウェーバーの影響が強いか。これは第1次世界大戦後の極端なインフレと関係します。第1次世界大戦、ちなみに第1次世界大戦は歴史学者、思想家の間では現在でもものすごい話題になっているんです。第2次世界大戦はあまり問題にならないんです。第2次世界大戦の原因がナチスドイツにあったということはほぼ確実なんです。第1次世界大戦後はなぜ始まったのかいまだによくわからない。政局の混乱状況を勉強するには第1次世界大戦の研究をすると面白いです。なぜ、サラエボでのオーストリア皇太子暗殺事件があれだけの世界戦争になってしまったのかよくわからないんです。
 
 しかも、イギリスの歴史学者のエリック・ボブズホームはこんなことを言っています。19世紀は実際の暦より長かった。意味として。19世紀の始まりは18世紀の終わりだ。1789年のフランス革命が19世紀の始まりで、終わりは1914年の第1次世界大戦の勃発である。それに対して20世紀は実際の暦より短いと言っている。1914年の第1次世界大戦勃発で始まって、終わりは1991年12月のソ連崩壊だと。これで20世紀が終わって、その後は、21世紀なんだと。その状況に対応して、日本では20年の時差がついたんですけれども、民主党への政権交代が起きたわけなんですよね。
 
 エリック・ボブズホームは第1次世界大戦と第2次世界大戦を区別する必要はないと言っています。20世紀の31年戦争だ。こんなふうに考えたほうがいい。第1次世界大戦の結果が中途半端だったので、第2次世界大戦が起きた。その問題は何かといったらドイツ問題でした。ドイツをどう処理するか。
 
 その観点から見ますと、21世紀の現在においてもドイツ問題は大きいですよ。EUの本質というのはドイツの拡張です。ドイツとフランスがもはや喧嘩をしないということで、ドイツは自分の勢力圏を東側に延ばすということを決め、それを西ヨーロッパが承認したということです。いまミュンヘンの町に行ってみましょう。ミュンヘンの町のレストランにはいって、名物のトンカツ、シュニッツェルを注文します。そのレストランの清掃に従事している人は相当の確率でチェコもしくはハンガリーから来ています。シュニッツェルの豚肉、相当な確率でハンガリーから来ています。こんどはハンガリーに行ってみましょう。ブダペシュトで養豚をしている。そこのところの労働者はウクライナ人がかなりいる。そしてブダペシュトの豚が食べている穀物はウクライナから来る。
 
 考えてみましょう。ナチスは民族を三つに分けました。文化創造民族、これはアーリア人種であります。ナチズムというのは人種主義によってナショナリズムを越えようとしたんですね。アーリア人種というのはドイツ人だけじゃないんです。たとえばノルウェー人もアーリア人種だとしました。それに対して、二番目のカテゴリーで文化維持民族というのがあるんです。自分たちから文化を創ることはできないんですが、文化を維持することのできる民族。それはチェコ人であり、ハンガリー人なんです。ちなみに東洋でも文化維持民族がいます。日本人であります。日本人はアーリア人種が創り出したことの物まねを英米を通じてやるしか能力がない連中なんです。今、その模倣能力が発揮されているから日本はそれなりの高い水準にあるが、英米との関係を切った瞬間に元のアジア的まどろみの中に陥ってしまう。これはアドルフ・ヒトラーが『我が闘争』のなかで言っています。
 
 ところが戦前の日本はこの部分を訳せなかった。戦前は『我が闘争』の全訳がないんですよ。どうしてかというと、こんな事実が明らかになったら日本の右翼を刺激してしまう。そうなったら、日独伊三国同盟ができないじゃないか。そういう自主的な形で日本の有識者や出版社が検閲をしていた。
 
 この人種主義者によって理想とされていた状況というのが、ドイツ人というのは消費を享受する。それを中間のところでサービス部門で現場で支えるのがチェコ人であり、ハンガリー人である。さらにその下を支えるところにいるのが、東スラブ系のウクライナ人である。この図式というのが結局のところ実現されてしまっているわけですよ。ところが人種主義は克服されたことになっているのでわれわれはそういったものを見ていないわけですよね。国際情勢というのはかなりその意味において帝国主義化していますし、その中で我々生き残っていかなければならないと思うんです。
 
 それから今日は民主党の方が圧倒的に多いと思うのですが、私は参議院選で民主党が勝つと見ています。これはおべんちゃらではありません。それはどうしてかというと、選挙工学を持っている政党が民主党しかないからです。ちょっと心配していたのが、みんなの党だったのですが、みんなの党は始動が早すぎました。いまマスメディアにおける消費は非常に早いです。6月くらいからみんなの党は本格的な動きをはじめればかなりの票を私は取ることができたと思うんですね。今の段階からはじめてしまったために、みんなの党が新自由主義政党だということがかなり近いうちに明らかになってくると思うんです。新自由主義的なプログラムを掲げた政党は、国民の広範な支持を得ることができません。それだから選挙に勝てません。自民党の場合はその潜在力を使い果たしたと私は見ています。ですから際限なき分裂が始まっていると思います。その状況の下で唯一の選挙工学を持っているのが民主党なんです。
 
 それからもうひとつ。小沢さんについていろいろいわれていますが、私は小沢さんを理解するにはヘーゲルを読むことが必要と考えます。ヘーゲルの中にエレメント(Element)という言葉があります。これは普通には要素、単位と訳されますが、哲学では境位、あるいは場と訳されます。どういうことか。魚が動くには場が必要なんです。水が必要なんです。魚にとっての水がエレメントです。私の見るところ、小沢さんは国家主義者です。国家が強くなることで日本の国は生き残るのだと考えています。逆に小沢さんの問題は国家と社会が同心円の中で一体化していることです。
 
 小沢さんが考えているところにおいては、国家自身が強くなるためには、国家自身に付随している官僚たちに任せると国家が弱くなる。ここのところがわかっているんです。そのために社会によって支えられている政党を強化しなければならない。自民党は政党ではない。国家システムと一体化しすぎてしまった。政党を強化して日本国家を強くしていくんだという考え方が小沢さんの基本です。
 
 そこから考えるならば、1990年の湾岸戦争の時に自衛隊をイラクに派遣することができなかった。あのときにもっと積極的に軍事力で国際貢献をすべきだった。ところが今になると、インド洋から引くということを言って、中国との関係を重視しようとしているのではないか。小沢さんは矛盾しているのではないか。国家主義という切り口から見れば、小沢さんはぜんぜん矛盾していません。時代状況のコンテクストにおいてそうやったほうが日本の国家が強化されると考えているんですね。
 
 また、1993年の『日本改造計画』でグランドキャニオンに柵はないといって新自由主義政策を推進していただろうと。それが今になったら、まるで社会民主主義者じゃないか。ここのところも小沢さんが矛盾している例としてよくあげられます。これも国家主義という切り口から見れば矛盾してないんです。1990年代の状況で行きすぎた日本のいわば社会主義的な体制にくさびを打ち込むことが必要と思った。ところが現状においては国家を生き残らせるには新自由主義ではだめなんだ。一定の函数体の幅の中政策を遂行しようとしているんです。
 
 それから二大政党制、これは小沢さんのテキストをみんなきちんと読んだらいいと思うんですね。去年の暮れに集英社文庫から出た『小沢イズム』を読むとよくわかります。小沢さんは時制の使い方がしっかりしています。二大政党制がよいと思った、と過去形でいっています。重要なのは二大政党制でも大きな政党が一つだけある形態でも構わないんです。政党が強化されることによって、国家が強化されるんだという信念を小沢さんはかなり強く持っています。客観的に見て、たぶんそれは正しいと思っています。帝国主義的な今の時代に対応していると思います。
 
 さらに第三的に見てみましょう、私は今連立政権の中で大きな役割を果たしているのは、社民党と見ているんです。それは一週間くらい前の『週刊現代』で、福島瑞穂さんがインタビューで小沢さんについてこんなこと言ってるんですね。あの人は24時間権力のことしか考えていません。それだから学ぶところが多い。彼女の本音だと思う。ですから普天間問題でいかなることがあっても、私は社民党の離脱はないと私は見ている。それでは社民党はどんな役割を果たしているのか。社民党は今度の参院選で新社会党から候補を出すことが非常にはっきりしていますが、いまや連立政権の左ウイングはですね、社民党からは社会主義協会系の新社会党の候補者が出ます。JR総連から民主党の候補者が出るのですが、この組合は公安警察と相当ぶつかっているといわれる戦闘的な労働組合です。それから社会活動家の雨宮処凛さんや湯浅誠さん、湯浅さんが(内閣府の顧問からは外れましたが)、厚生労働省のナショナルミニマム委員会のメンバーです。左のウイングで連立政権に糾合されていないのは日本共産党とごく一部の小さな新左翼だけです。
 
 じゃあ、右の方見てみましょう。小沢さんの高野山でのキリスト教批判発言は非常に重要です。あの発言を私はキリスト教への批判と見てないんです。あれは神道政治連盟、神社本庁、明治神宮、それから出雲大社などへのシグナルです。寛容の多元性の伝統に基づくような日本の伝統宗教は民主党の味方である。いつまで自民党と一緒にくっついているんですか。それで神社にいいことがありますかという、明確なシグナルだと思うんです。

 このへんの流れがある中で、公明党、創価学会の動きも明らかに変わっています。習近平(中国国家副主席)さんの天皇との会談要請問題の時に、公明党が一緒に(宮内庁側の日程調整ルールに反するという民主党への批判に)のっていれば、自民党と公明党の連合で相当、民主党叩きができた。ところが入口のところで山口那津男さんが止めました。それから公明党は補正予算にはじめから賛成した。そもそも予算に関しても補正予算に賛成する野党なんてないですからね。公明党は流れをよく見ている。
 
 この全体の流れは何なのかというと、ずばりマックス・ウェーバーの、これから勉強していくキーワードの「権力」なんです。
 
 民主党が巨大な権力になっていることは間違いないんですね。良いとか悪いとかではなく。これが流れなんです。皆さんが相当なエラーをしない限り続くと思いますし、私は次の総選挙では81.7%の壁を越えるんじゃないかと思うんですね。81.7%の壁とは、昭和17年(1942年)の翼賛選挙です。翼賛会が81.7%の議席を占めた。その状況でも18%くらいは反翼賛がいたんですね。おそらく日本の国家がそういった形での巨大で強力な政党、それによって国家を運営するということを望んでいるわけなんです。それに無意識のうちに反映して民主党は動いているのだと私は見ているんです。だからいま、民主党は組織的な強化はなされているんですが、理論的にどんな日本を作っていくのか、そういう議論をすごくしてほしいと思うんですよ。
 
 この前置きのもとでウェーバーを読んでいきたいと思います。
(2010年4月15日 於衆議院議員会館)
 
*マックス・ウェーバー 1864‐1920 ドイツの社会科学者。主著に『プロデスタンティズムの倫理と資本主義の精神』。勉強会のテキスト『職業としての政治』は、1919年、第1次世界大戦に敗北し、革命の気運が高まるドイツで、ウェーバーが若者を前に講演した内容を本にまとめたもの。
 
*「魚の目」編集部より:次回から、『職業としての政治』を読み進めていきます。『職業としての政治』岩波文庫版をテキストに使用します。手元に用意しておくと、勉強会の内容がより興味深いものになるかと思います。