弁護士業の現場から第二回

▼バックナンバー 一覧 2010 年 1 月 27 日 安田 好弘

(5)準抗告申立書

東京地方裁判所刑事部 御中
 

被 疑 者   石川知裕
弁 護 人   安田好弘

 
 上記の者に対する政治資金規正法違反被疑事件について、東京地方裁判所裁判官が本日なした勾留の延長の裁判に対し、下記の通り、準抗告を申し立てる。
 

第1 申立の趣旨

 1 原裁判を取り消す。
 2 検察官の勾留延長請求を却下する。
との決定を求める。
 

第2 申立の理由

 1 本件勾留延長は、被疑者をしてもっぱら虚偽自白をさせようとするものであって、勾留制度の濫用であり、違法である。
 被疑者は、逮捕勾留以来、以下のとおり、毎日平均約8時間、合計約80時間の長時間の取り調べを受けている。しかも、その取り調べ時刻は、午前10時から深夜の午後11時半までに及び、その間、被疑者は、椅子に座り続けさせられ、
  「小沢議員は虚偽の収支報告をすることを知っていただろう!」
  「水谷建設からお金を受け取っただろう!」
等と激しく追及され続け、また「嘘をつくな!」などと激しく罵倒され続け、肉体的にも精神的にも完全に疲弊させられており、筆舌に尽くしがたい苦痛を受けている。被疑者に対し、憲法36条が禁止している拷問が行われているのである。

日にち 曜日 取調時刻 取調時間
2010/1/16 18:30-23:30 5:00
2010/1/17 10:30-11:30
13:30-16:00
18:30-22:00
7:00
2010/1/18 不明
弁護人の聞き漏らし。
不明
2010/1/19 10:30-11:30
14:00-16:00
18:30-23:00
8:00
2010/1/20 10:45-11:30
13:30-16:20
18:30-23:10
8:15
2010/1/21 11:30-12:30
13:30-16:30
18:50-23:30
8:40
2010/1/22 10:30-12:30
14:00-16:30
19:40-23:00
7:50
2010/1/23 10:30-11:20
14:00-16:30
19:00-23:00
7:20
2010/1/24 13:50-16:30
18:30-23:00
7:10

 取調検察官が、合計約80時間もの時間をかけて、被疑者に訊いているのは、もっぱら、
(1) 虚偽の収支報告につき小沢議員と共謀したか否か、
(2) 土地購入資金のうち1億円は水谷建設からのヤミ献金ではないか、
ということに終始している。そもそも、本件被疑事実は、大久保氏と共謀したというものであって、小沢議員と共謀したものではない。また、本件被疑事実は、収入を4億円少なく報告したというものであって、収入先を偽ったというものではない。従って、上記の各質問は、本件被疑事実とは全く関係のない事項である。
 もっとも、被疑者は、上記の質問について、当初から、そのような事実がないことを明確に述べているが、今日に至るも、執拗に、尋問が行われ続けている。被疑者が小沢議員と共謀したことがないこと、水谷建設から金銭を受け取ったことがないことは、言うまでもないことである。
 以上から、明らかなとおり、本件事件に関する捜査はすでに終了している。本件勾留延長は、被疑者をさらに10日間勾留して、さらに長時間の取調をして被疑者に苦痛を与え、もって虚偽の自白をさせようとするものにほかならず、勾留制度の濫用であって、違法である。
 
 2 以上のとおりであるので、本件勾留延長の取り消しを求める次第である。
  弁護人は、検察官に対し、取調の可視化と長時間および夜間の取調の禁止、調書作成に際して事前に弁護人の了解を得る機会の確保を求めているが、未だに何も行われておらず、本日、午後4時の弁護人による木村検察官に対する申入れにおいても、同人は弁護人の申入れを完全に拒否することを明言し、自分たちのやりたいように捜査を継続すると強弁している。
  裁判所は、刑訴法上、検察官の違法な取調をチェックし、これを制止すべき義務を負っている。弁護人は、裁判所が、その職責を怠り、検察官の虚偽自白の強要に手を貸すことがないよう、強く求めるものである。
以上

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