佐藤優の文章教室佐藤優「大学生が異文化に触れることを通じ、急速に成長していく過程が物語られた傑作」カナダ留学日記3

▼バックナンバー 一覧 2025 年 2 月 18 日 佐藤 優

 本作品は、現在カナダに留学している同志社大学新島塾6期生・中村薫泉氏(グローバルコミュニケーション学部2回生)による日記形式の留学体験記だ。ここでは、大学1回生の2024年2月27日にカナダに向け出発し、語学学校を修了し、アメリカ合衆国、カナダ国内、中南米諸国への旅行を終える同年9月1日までの記録が収録されている。

 語学の学習法、文化環境が変化する中で揉まれて、19歳から20歳になる過程で、学力的にも人間的にも中村氏が急速に成長していることが窺われる。

 今後、英語圏の外国への留学を考えている大学生が学習の手引きとして用いることができる。

 なお、私は外交官時代の自らのイギリス留学経験(1986年6月~87年8月)で励行したこととして中村氏に以下を伝えた。

1.日本人同士で群れない。 

2.1人でも外国人がいるときは、日本人同士でも英語で会話する。

 中村氏がそれを励行したところ、同志社の他の留学生グループからラインとインスタグラムを外されたとのことだ。どの社会にも年齢にかかわりなく嫉妬から幼稚な行動をとる者がいる。そういう人は、自分が嫉妬という感情を抱いているという自覚がないので厄介だ。私は「そういう学生たちとはこちらからお願いしてまで付き合う必要はない。留学の目的は英語の向上と異文化を体験することだ」と指導した。

 新島塾で私が主宰する「読書ユニット」では、学術書、小説、一般書などをZoomで読む勉強会を月数回行っている。日本時間で午前6~9時の時間帯だが、カナダでは午後5時から8時なので中村氏も勉強会に加わっている。カナダでの日本人学生との関係が難しくなっても、中村氏は新島塾では人気者で、仲間たちと楽しく勉強をしている。

2024年11月   佐藤優(同志社大学学長特別顧問、同志社大学客員教授)

中村薫泉「カナダ留学日記(語学学校編)」68日目〜91日目

5月5日 【カナダ留学68日目】

 ホストマザーと2時間くらい話したこと
1. 現代の社会システムは男性が有利になるように作られていること。
2. 女性が権利を保障されるようになったのは50年前くらいで最近。
3. 交際相手がいい人かどうかを見極めるのはcommitment to learning(学習への意欲)を見る。
4. Patriarchy(家父長制度)が存在すること。
5. construction(建設)とか肉体労働をしたいと思う人がどこの国にも少ないこと。

5月6日 【カナダ留学69日目】

 友達が南米で男の人と付き合うということは、どういうことかを面白おかしく説明してくれた。初デートでキスをするのはかなり当たり前のことで、正式に彼女、彼氏になって欲しいとお願いする際は良いレストランへ行き、花束を上げたりプレゼントをしたり、何か特別な演出をすることが必要など、色々なことを知った。

5月8日 【カナダ留学71日目】

 天気が良かったので友達と外でお昼ご飯を食べた。キャンパスの敷地内を歩いていると頻繁にリスと遭遇することができるくらい木が沢山あり、自然とうまく共存してるキャンパスなので屋外で食べるお昼ご飯は一段と美味しく感じた。いつもお弁当なのに友達は珍しく今日はカフェテリアのピザを食べていた。訳を聞くとリュックにお弁当箱を入れるのを忘れたとのこと。もう一人の友達はスタバの新作を飲んでいた。ココナッツ味だと言っていたが飲み物は水色で日本では食欲減退色なため、私はとても飲む気にはなれなかった。

5月9日 【カナダ留学72日目】

 母の日だったので語学学校でイベントがあった。針金やモールを使い、カラフルなお花を作った。納得いくプレゼントが作れ、家に持って帰ったが渡すのがなんだか照れ臭くて、次の日の朝学校へ行く前に渡した。喜んでくれた。

5月10日 【カナダ留学73日目】

 自分がやってきたこと話してもいいことないなーって思った1日だった。ディスカッションのトピックを決める時にジェンダーがいいって言ったら親しい友達に拒否された、馬鹿なふりしてるのが一番賢いと思う。

5月12日 【カナダ留学75日目】

 友達とドライブイン・ムービーに行った。彼のホストファザーが車を貸してくれるから一緒に映画を見に行こうと誘ってくれた。海外で友達に運転してもらうのは初めてだったしドライブイン・ムービーにも行くのがこれが初めてだった。いつかやって見たいと思っていたことだったので嬉しかった。映画は2本構成で”カンフーパンダ4”と”フォール・ガイ”だった。1個目は面白かったが2個目は所々つまらなかった。だが映画の前にポップコーンとホットドッグを買い、車の中で食べたのはいい思い出になった。映画の上映が深夜1時に終わり、その後家まで送り届けてくれた。

5月13日 【カナダ留学76日目】

 家にメロンがあって嬉しい。冷蔵庫にあるフルーツを一種類ずつ入れ、ボウルを果物尽くしにして頬張っていたらプードルが分けて欲しそうに目をうるわせて懇願してくる。りんごが大好きらしく、1カケ分けてあげた。そして明日の朝ごはんにお米を食べたいと思い、作ってみたら鍋を焦がしてしまった。ごめんなさい。

5月14日 【カナダ留学77日目】

 我が家のアイドル(プードル)の3歳の誕生日!家族から新しいおもちゃを買ってもらって嬉しそうに一日中遊んでた。可愛い。

5月15日 【カナダ留学78日目】

試験が近づいており、課題量がピークを迎えている。

5月16日 【カナダ留学79日目】

 今日はスピーキングの試験があり、グループディスカッションが課された。十分に準備する時間があり、私たちのグループは環境問題を取り扱うことにした。今まで習った知識を議題に含めると加算されるとのことだったのでポリマーや海洋汚染のデータを準備し、本番に臨んだ。教室に4つの椅子が並べられており、割り当てられた時間に教室へ行き、討論する形式だった。自分の調べてきたデータを示しつつ、話が一方通行にならないようにし、且つ私はスピーキングには自信があるのでゆっくり、相手に伝わるような話し方を意識できた。

5月18日 【カナダ留学81日目】

 友達の香水がいい匂いでずっと気になっていたので今日聞いてみるとDiorのSAUVAGE(ソバージュ)だった。お母さんから高校卒業記念にプレゼントしてくれたらしい。

5月19日 【カナダ留学82日目】

 友達が大学敷地内のArboretum(アルボリーデム)という自然保護地区に歩きに行こうと誘ってくれたので動きやすい服装で待ち合わせた。たわいもない話をしながら5キロほど一緒に歩いたところで疲れたので帰ることにした。そして帰宅後、自分が英語を話している動画を残して留学生活でどれだけ変わったか比べようと思っていたので、その一本目を撮った。近況報告も兼ねて、一人で英語をただ話してる動画をお世話になってる人たちに送った。若干恥ずかしいけど、これを見返す頃にはもう少し成長できてるといいな。頑張ろう。

5月22日 【カナダ留学85日目】

 友達が映画を見に行こうと話になったので放課後、軽食をとってから行くことになった。大食いの彼が2日前に親知らずを抜き、食欲がかなり減退している様子は見ていて心が痛かった。

5月23日 【カナダ留学86日目】

 遂に日本人から無視されるようになる。無視っていう表現は違うかもしれないが、話さなくなった。バス停一緒の人がいて、前なら挨拶程度話してたのに今日は何もなし。そういえば次の休みどこに行こうと考えていてついに今日ロサンゼルスとラスベガス行きの飛行機を取った!超楽しみやばい!!!!憧れの西海岸!!!!!!!!

5月24日 【カナダ留学87日目】

 1人でボランティア活動へ。先月の振り返りの際、ゲルフに来た意味を再確認した時にボランティアが大きな理由だったから自分にできるボランティアがないかを必死に探した。フードバンクで食品を渡す役割があったので参加した。システムなどが色々自分に新鮮で楽しかった。話を聞くとコストコ、ゼウスなどの大型ショッピングセンターの廃棄物を寄付という形で受け取り、基準を満たす対象者に無償で渡しているらしい。提供するものは食べ物だけでなくて赤ちゃん用品、ペット用品、ヘアオイルとかその他諸々。人口が少ないカナダだからこそロスをなるべく減らせるように工夫してるのが伝わってきた。ボランティアの後は天気が良かったので友達とピクニックをしてきた。緑に囲まれながら本を読んだり写真を撮ったり美味しいものを食べるピクニックは幸せで心が落ち着いた。

5月28日 【カナダ留学91日目】

 カナダ来て3ヶ月!思ったより時間がゆっくり過ぎてるのを実感している
1. ポップコーンが食べれるようになった。
2. 基本レモネード系の飲み物は飲めることが判明。
3. 蜂と鳥のイメージは男女の営みを暗示する。
4. 課題が多過ぎる、忘れないように超巻いてやっているが多い。
5. 日本人、他の国の人に比べてプライバシーがない。
6. 恋愛めんどくさい。
7. 友達からスペイン語を少しずつ学んでいる。
8. 最近家に食べ物が豊富で料理し始めた。今週は作り置きの弁当3回持って行った。
9. 肌荒れが治ってきた。
10. ボランティアのハードルが低くて行動しやすい。
 今日で映画は合計55本見た、今のところ一番好きなのはQueens Gambit(クイーンズギャンビット)。