佐藤優の文章教室佐藤優「大学生が異文化に触れることを通じ、急速に成長していく過程が物語られた傑作」カナダ留学日記2
本作品は、現在カナダに留学している同志社大学新島塾6期生・中村薫泉氏(グローバルコミュニケーション学部2回生)による日記形式の留学体験記だ。ここでは、大学1回生の2024年2月27日にカナダに向け出発し、語学学校を修了し、アメリカ合衆国、カナダ国内、中南米諸国への旅行を終える同年9月1日までの記録が収録されている。
語学の学習法、文化環境が変化する中で揉まれて、19歳から20歳になる過程で、学力的にも人間的にも中村氏が急速に成長していることが窺われる。
今後、英語圏の外国への留学を考えている大学生が学習の手引きとして用いることができる。
なお、私は外交官時代の自らのイギリス留学経験(1986年6月~87年8月)で励行したこととして中村氏に以下を伝えた。
1.日本人同士で群れない。
2.1人でも外国人がいるときは、日本人同士でも英語で会話する。
中村氏がそれを励行したところ、同志社の他の留学生グループからラインとインスタグラムを外されたとのことだ。どの社会にも年齢にかかわりなく嫉妬から幼稚な行動をとる者がいる。そういう人は、自分が嫉妬という感情を抱いているという自覚がないので厄介だ。私は「そういう学生たちとはこちらからお願いしてまで付き合う必要はない。留学の目的は英語の向上と異文化を体験することだ」と指導した。
新島塾で私が主宰する「読書ユニット」では、学術書、小説、一般書などをZoomで読む勉強会を月数回行っている。日本時間で午前6~9時の時間帯だが、カナダでは午後5時から8時なので中村氏も勉強会に加わっている。カナダでの日本人学生との関係が難しくなっても、中村氏は新島塾では人気者で、仲間たちと楽しく勉強をしている。
2024年11月 佐藤優(同志社大学学長特別顧問、同志社大学客員教授)
中村薫泉「カナダ留学日記(語学学校編)」31日目〜61日目
3月29日 【カナダ留学31日目】
ライティングでCompare and Contrast Essay(比較対象型)のエッセイをペアで書く課題が出された。授業ではビジネス倫理に関するトピックを扱っているのでエッセイ内容もそれに沿ったものにした。今回は1000字相当の文章量を求められているので授業内でも草稿を練る時間が十分に与えられた。どのような構成にするか、何を比較するか、資料は何を用いるかなど、10枚にわたるブレインストーミングを書いた。(これも評価対象だった)様々な情報収集を行なった結果、内容は日本と中国の経済がどのように違うのかを比較することにした。
3月30日 【カナダ留学32日目】
いつも一緒にいる友達とナイアガラの滝へ来た。クルーズに乗り、滝の真下まで行ける体験ができるとのことだったので、試してみる事にした。いざ乗船し、滝の方へ進む。
「あれ、前が見えない」
滝の水飛沫でシャワー状態になり、かろうじて目を開けることが出来る状態になった。事前に雨ガッパが配られたが意味を成さず、全身びしょ濡れになってしまった。しかし滝の大迫力を肌身で感じられたいい経験だった。その後は観覧車に乗り、上空からナイアガラの滝の全貌を見た。お昼は私が高校時代から食べたいと思っていたアメリカのハンバーガー系列店Apple bee(アップルビー)というお店へ行く事になった。カナダにはないと思っていたが、ナイアガラの滝がアメリカとカナダの国境に位置しているので展開されているのだろう。ハンバーガーのセットで5000円という驚異的な値段だったが美味しかった。アメリカに旅行する時も食べたいな。お昼を済ませ、アイスクリームを片手に周辺を歩き、満足したところで帰路についた。
3月31日 【カナダ留学33日目】
夜ご飯を食べながら新島塾読書セッションのzoomに参加した。新島塾読書セッションとは読書を介して知的探求をしたい同志で元外交官、現作家の佐藤先生から随時指導してもらいながら知見を深めあうユニットである。アットホームすぎる空間だ、大好き。
4月1日 【カナダ留学34日目】
日本人に発音が上手くなっていると褒めてもらえた。自分では気づかないから教えてくれて嬉しいし、成長に気づくことができてよかった。授業後いつも通り友達と図書館へいき、今日は祖国について少し話してくれた。彼女らもパナマからの留学生なのでパナマがどういう国か、伝統料理や祭りなど今まで聞いたことがないような事ばかり教えてもらった。夏にもしかしたら一時帰国するかもしれないとのこと。一緒に行けたらいいなとふと思った1日だった。
4月3日 【カナダ留学36日目】
友達がジムの施設で卓球ができるから遊びに行こうと誘ってくれたので、授業と授業の間の長時間休憩を使っていく事にした。ダブルスで戦い、1点差で負けてしまった。悔しい。ジムを出ようとしたらミール券を無料配布していたので受け取った。詳細を見ると大学内全ての食べ物、飲み物、それぞれ1つずつ無料で受け取れるという趣旨のものであった。内心そんなことある?と思いながら友達と話し、授業後にカフェテリアへ行く事にした。スタッフに聞くと今日限り有効だと言われたので私たちは大興奮して以前から気になっていたビュッフェ式のご飯を食べる事にした。通常なら計量され、お皿によそった量で値段が決まるのだが、今日は無料なので箱いっぱいに重いもの(肉、芋)などを詰め、受け取った。幸せな気分に浸りながら友達と食事を楽しんだ。そして帰宅後、以前もらった花束が限界を迎えたので押し花を作った。
4月7日 【カナダ留学40日目】
スピーキングの授業でまたペアプレゼンテーションの課題が出された。今回は一つの企業に関して詳しく調べるというものだった。具体的にはその会社の発端、どのようなモットーがあるのか、今まで何を成し遂げてきたのか、支店は何店舗あり、どの地域に展開されているのか、といったようなものだ。そこで私たちはディズニーを取り扱うことにした。特に深い理由はなく、二人ともディズニー映画が好きだからこの会社を選ぶことに異論はなかった。
4月8日 【カナダ留学41日目】
今日は日食が起こるらしい。それを一目見るべく先生が協力してくれ授業を一時中断してクラス全員で外へ出た。日食になった瞬間辺りが急に暗くなり、不思議な感覚に陥った。授業でmoral inquiry through literature(文学を通した道徳的探求)に関するレクチャーを聞いたが、全然内容聞き取れず落ち込んでいる。リスニングだけは自信があったし正直クラスの中で一番できると思っていた。だが質問に対する答えをグループで考える際に一言も発せれない自分が本当に惨めだった。
メモは取っていたが全く内容理解できておらず教授の発音が曇り過ぎて言葉も掴めない。悔しい。まさか自分が留学に来てリスニングで悔しい思いする日が来るなんて思ってもいなかった。どうしたらいいんだろう、とりあえずもう一回授業で聞いたレクチャーを聞く。こんなに悩むことではないし、なぜ自分がこんな感情になっているのかもわからないがとりあえずこの感情を忘れないようにメモしておこうと思った。文法を勉強すべき?何をしたらいいの。あと友達と話している時も自分の言いたいことが英語ですぐ出てこないことにイライラしてしまった。時間が経ったら改善されることなのだろうか、慣れが必要?今日は少しネガティブだ。
4月9日 【カナダ留学42日目】
授業後、友達といつも通り予約していた図書館の部屋へいき、宿題をこなしていた。そして何が原因か分からないが友達とアナ雪の「生まれて初めて」をノリノリで歌ってしまい、隣の部屋にいた人から怒られてしまった。その注意の仕方があまりにも独特で私たちは図書館の部屋の中で音も立てられない大爆笑をしていた。
4月13日 【カナダ留学46日目】
友達がパナマ料理を作ろうといていたので彼が祖国でよく食べていたチキンライスを再現することになった。しかし、彼はあまり料理経験がなく水の分量を間違え、調味料もしっかりしていないのでとても食べられる味ではなかったが失敗しても楽しいのが料理である。代わりに宅配で違う食べ物を頼み映画を見ながら食べた。
4月14日 【カナダ留学47日目】
屋内で遊び回れる施設があるというので友達と行くことにした。カナダは国土が広いためどこへ行くにもアクセスが悪いがその現実にもそろそろ慣れてきた。彼は筋肉バカなのでその能力を発揮し、色々なセクションを軽々とこなしていた。一方、私はそれを見て、少し挑戦するも上手くいかなかったので基本見る専に徹した。そのあとは夜ご飯まで微妙な時間だったがお腹が空いたのでマクドナルドでハッピーセットを頼んだ。ハンバーガーを食べようとするとその大きさに驚いた。手のひらに収まる大きさだったのである。日本でハッピーセットのバーガーはこれほど小さかっただろうかと疑問に思いながら食べ進めた。夜ご飯にはトロントへ出向き、友達が海鮮丼を食べてみたいと言ったので日本食屋さんへ行った。
4月15日 【カナダ留学48日目】
家の周辺を少し散歩した。私の家はゲルフのはずれにあるので少し歩くと何もない一本道が広がっていたり、牛やロバを見たりすることができる。5キロほど歩き、帰宅しお昼ご飯を作った。メニューはミートボール、卵焼き、じゃがバターに白ごはんだ。我ながら上手くできた気がする。
4月16日 【カナダ留学49日目】
語学学校の期末期間中だが中日の休みだったので友達の家へ遊びに行く事にした。アイスを食べ、少し散歩した。カナダは自然が多く、視界のどこを切り取っても必ず緑があるから散歩していてとても気持ちいい。家に戻りピアノを連弾して遊び、たわいもない会話を楽しんでいたら彼女のホストファミリーが夜ご飯を振舞ってくれると言ってくれたのでご馳走になる事にした。メニューはラザニアとパスタ。美味しかった。
4月18日 【カナダ留学51日目】
ホストシスター17歳の誕生日。家族と祖父母、私の6人でゲルフから少し離れた場所にあるレストランへ行く事になった。ここで私は祖父母と初対面。世間話をしながら食事を終えたところへスタッフがホストシスターへケーキを渡しに来た。家族からプレゼントを受け取る様子を見た店員が取り測ったようだ。素敵なサプライズに心が温かくなった。奇遇に今日は私の母の誕生日でもある。私を産んでくれて、立派に育ててくれてありがとう。残り9ヶ月でもっと成長して帰ってくるからね。
4月19日 【カナダ留学52日目】
遂に語学学校1ターム目が終了!お疲れ会を兼ね、他クラスの留学生を誘い、お昼ご飯に中華料理を食べに行く事にした。合計で8人、内訳はイラン×2、パナマ×5、日本×1。各国色んなことを情報交換し、最後には政治の話になっていた。昼食後はアイスクリームを食べに行き、それぞれ帰路についた。充実した1ターム目最終日だった。
4月20日 【カナダ留学53日目】
2ターム目まで2週間弱休みがあるので旅行をすることに決めた。行き先はニューヨークとカナダのバンフの2箇所。ニューヨークは一人旅なので計画を丁寧に作り始めている。初めての一人旅。不安9割楽しみ1割。
4月22日 【カナダ留学55日目】
起きたら友達がパナマの伝統料理を一緒に作ろうとお誘いの連絡があったので、彼女の家へ向かう。今回作るのは”Patacon(パタコン)”という中南米料理であるバナナチップスだ。 南アメリカやカリブ海沿岸諸国(エクアドルやコロンビア、パナマ、ベネズエラなど)で食べられている食品で、甘くない青い料理用バナナ(プランテン、ベルデなど)の皮を剥き、輪切りにして油で揚げ、一旦取り出して潰して、再度揚げるというもの。”バナナを揚げる”という概念には少々困惑したが実際に一緒に作って食べてみると個人的に好きな味だった。好きな”味”というには語弊があるが、好きな食べ物だった。そのまま夜ご飯までご馳走になり、帰宅した。パナマの魅力をさらによく知れた日だった。そしてニューヨーク出発前夜なので最終確認をする。早起きしないといけないから早めにベッドに入る。
4月23日 【カナダ留学56日目】
遂にニューヨーク一人旅2泊3日がスタート。フライトはトロントのピアソン空港からニューヨークのラガーディア空港で搭乗時間は10:30。国際線だから、3時間前までには空港についておかないといけないらしい。前夜、明日は朝が早く、始発のバス乗っても搭乗1時間前に着く便しかないとホストマザーに相談し、車で空港まで送ってもらえるかお願いした。すると承諾してもらえたので、今空港へ向かうため助手席に座っている。私が初めての一人旅に緊張しているのに気付いたのか、それを和らげるためかホストマザー自身が19歳の時にキューバへ一人で行った時の話をしてくれた。楽しみなこと、不安なこと諸々を話していると空港につき、旅行の実感が湧いてきた。マザーにお礼と別れを告げ、大きな電光掲示板を見てから受付カウンターへ向かう。初めての一人で空港、国際線の利用だったので不安に押しつぶされそうだったが私の質問に嫌な顔ひとつすることも無く、空港のスタッフは優しく対応してくれ、搭乗券を受け取った時に確認するとゲート番号に蛍光ペンで線を引っ張ってくれていた。彼女からしたら何気ない印だったかもしれないが私はその気遣いがとても嬉しかった。そして手続きは全て完了し、ゲートの前の席に座り、妄想を繰り広げる。どんな世界なんだろう、物価はやっぱり高いのかな、ブロードウェイってどんな感じなんだろう、銃怖いかも、人は優しいのかな、ピザ食べるの楽しみだな。そんなことを思い耽っていたら搭乗グループの番号が呼ばれたので飛行機に乗り込む。どんな旅になるんだろう。
無事ラガーディア空港に着陸し、すでにカメラのシャッターを切る手が止まらない。そんな興奮も束の間、保安検査の次に緊張する入国審査が待っているので急ぐ。そして全てが終わり、ニューヨークの土地に足を踏み入れた。空を見上げると雲一つない晴天で、街が私を歓迎してくれているような清々しい気分になった。空港からの道順は全てメモしてある。入念に下調べをしておいたのでスムーズにホステルへ無事到着した。受付は若い女の人2名で片方はスペイン語を流暢に話していた。「チェックインしたい」という言葉を今まで英語で使ったことがなく、どのような表現を使えばいいか考えながら話したので少し言葉に詰まってしまったが通じた。
身分照合を済ませ、チェックインまで時間があるのでホステルに荷物を預け、周辺を散策する事にした。この時パスポートをホステルに預けた鞄の中にそのまま入れっぱなしにしていたことに気づいたのは散策開始1時間の時だった。ホステルはセントラルパークの北に位置し、地下鉄、バスのアクセスも良いので特に交通手段に困ることはなかった。パスポートを取りに道を引き返し、そのままチェックインも済ませてから再び街へ出た。
行き先はタイムズスクエア。オンライン上で知り合った人(女性)とアラジンのブロードウェイを見に行く約束をしていたからだ。アプリで人と会うのは初めてだったので待ち合わせ前はとても緊張した。デートの前みたいな感覚だった。写真を送り合うSnapchat(スナップチャット)というアプリで相手の顔はよく見ていたので彼女が到着したらすぐにわかった。軽く自己紹介を済ませ、会場に入る列に並ぶ。ブロードウェイにドレスコードはないのだが、「どうせなら可愛い格好したいよね」と事前に話しており彼女が私用にもドレスを持ってきてくれていた。開演前にお互いトイレで着替えを済ませ、綺麗な身なりで鑑賞した。ショーは沢山のユーモアで溢れており、何より柔らかい雰囲気で演者と観客が一体になっていたのが良かった。笑う時は周りを気にせず笑い、悲しい場面の時は同情の声を上げるニューヨークはエンタメの都市だとはよく言ったものだ。
終演後、時刻は21:30。夜ご飯を食べ損ねた私たちはお腹がぺこぺこだったのでニューヨークで有名なピザを食べに行くことにした。実は空港行きの車の中でホストマザーに「ピザとベーグルは絶対に食べてきてね」と言われていたのでとても楽しみにしていたのだ。向かったお店は”Joe’s pizza(ジョーズピザ)”タイムズスクエア店だ。この店舗が一躍有名になったのは2004年公開の映画『スパイダーマン2』にて、主人公ピーター・パーカーが配達員としてジョーズ・ピザで働いていたことに起因する。映画への登場以来、このピザ屋は注目されるようになり、ニューヨークのいくつかの店舗では映画に登場したことをアピールしている。夜ご飯のピークは過ぎてるし、すぐに入れるだろうと思っていたら店の前に行列ができていて並ぶ羽目になった。しかしどうしてもここのピザが良かったので列に混じることにした。40分近く並び、ようやく店内に入れた。店内を見ると椅子が5,6個、ほとんどの人がテイクアウトをしていた。狭い厨房だと回転率を上げられず提供に時間がかかるのだろうと踏んだ。注文したのは一番クラシックなチーズピザで注文して5分後くらいに提供された。推測が外れた。一口食べてみると濃いチーズとあり得ない量の油、そしてカリカリに焼かれた生地が混ざり合い、空腹も相待って今まで食べたピザの中で一番美味しい味を引き出していた。1スライスだけで顔の大きさ以上あるジョーズ・ピザだが、一瞬で平らげてしまった。
店を後にして夜のタイムズスクエアを見に、歩みを進める。”アメリカといえばニューヨークのタイムズスクエア”とイメージしてきた私からするとこの景色を見れただけで幸せな気持ちになった。23時近かったからか、人は想像してるより少なく歩きやすかった。大画面に映し出される広告を見ながら、少しお腹が空いてきた感覚に襲われる。友達がM&MとHERSHEYS(ハーシーズ)のお店を見たいと行ったので向かうがM&Mは22時で閉店していた。なのでHERSHEYSへ行き色んな種類のチョコレートを物色した。有り得ない大きさの板チョコが売られていたり、可愛いクッションやドリンクまで売られていたりしていて見てて飽きなかった。そして彼女はチョコの袋詰めできるコーナーを見つけ、袋から溢れるまで色々な種類のチョコを詰めていた。(この店舗では袋を持てたらどれだけ詰めてもOKというルールがある)
その後はニューヨークで有名な屋台を試してみることにした。お腹が空いているのは自分だけかと思っていたら彼女も何かを食べたくなってきていたらしい。迷いに迷ってギリシア料理が提供されている屋台からいい匂いがしていたので、そこでご飯ものとお肉を注文。料理名はgyro(ジャイロ)と言い、ギリシャ料理の肉料理の一種で、棒に刺した薄切り肉を回し焼きにしたものだ。インド人の店員さんとどこから来たの、何泊するのなど話しながら食べて完食した。他の屋台の様子も少し観察していたが人は気さくでサービス精神旺盛、優しい印象を受けた。実際、私たちが去ろうとした時も店員が水を一本ずつ私たちに与えてくれた。水さえ高い欧米でこのようにサービスしてくれるのは心が温かくなるような思いだった。真夜中のタイムズスクエアで綺麗なドレスを満足いくまで写真を撮ったらすでに深夜2時。ニューヨークは電車が24時間走っているので終電の心配はする必要がない。明日も予定が詰まっているので名残惜しいが切り上げてお互いホステルへ向かうことにした。そして借りたドレスを返すため、彼女と明日にもう一度会うことにした。真夜中のタイムズスクエア、地下鉄は想像より安全で怖い思いひとつすることなく、無事ベッドに入ることができた。
4月24日 【カナダ留学57日目】
昨日はかなり遅くまで起きていたが興奮とアドレナリン全開で8時に起き、身支度を済ませ、9時にホステルを出発した。ニューヨーク2日目はマンハッタンの南の方を探検する予定になっている。具体的にはウォール街、ブルックリン、SoHoエリアになる。教科書や写真で見てきたものを実際に目視する瞬間は毎度感動させられる。沢山歩き、疲れたのでSOHOにあるLevain cookie(ルベンクッキー)を買うことにした。下調べの段階で数多くの人が食べているのを見て気になっていたのだ。店内に入るとバターの香りが強く立ち込め、大きなチョコチップクッキーがディスプレイされているのを見つけた。見た瞬間に、他の種類を見る間もなくそのクッキーを頼むことを決めた。注文を終え、歩数計を見ると10キロ近く歩いている、想像以上の距離に足が悲鳴を上げ始めている。
店内で座って大きなチョコチップクッキーを頬張ると疲れが吹っ飛ぶ美味しさであった。ザクザクな食感、程よい塩味、鼻から抜けるバターの香り。カロリー爆弾のような悪魔の味がしたが頬が落ちる思いだった。クッキーを食べ終え、昨日会った友達との待ち合わせ時刻が近づいているのでその場所へ向かう。一緒にお昼を食べようという話をしたのでマーケットへ来た。ニューヨークで有名なタコスがあると情報があり、試してみること。メキシカン料理にあまり挑戦してこなかった自分からするとメニューに書かれている種類の違いもわからず友達に沢山質問した。結果、質問してもよく分からなかったので彼女と同じものを頼むことにした。私が頼んだのはQuesadilla(ケサディーヤ)というものでメキシコの料理の一つ。 トルティーヤの中にチーズや他の具材を挟んで、折りたたんで焼いた食べ物との説明を受けた。食べてみるまでは分からないので実際に食べると私の好きな類の味がした。しかし1ピース1000円にしては高いし、少し物足りない感じがした。
その後は友達と周辺を散策し、16時過ぎに解散した。初めて会ったのに、居心地が良くて楽しく過ごせたので別れるのが悲しかった。彼女も初めての一人旅で、カナダ在住とのことだったのでもしかしたらまた会えるかもしれない。お礼と感謝を伝え、私は夜ご飯のお店へ向かった。夜ご飯に向かったお店はKatz’s Deli(カッツデリ)というお店で創業135年で地元の人にも愛されるレストランだ。ここでは一人で食べ切ることのできないパストラミサンドが名物なので私もそれを頼むことにした。商品を受け取り席で食べる準備をしていると2つ隣のテーブルに座っていたカップルがプロポーズに成功した。拍手と歓声が上がり、海外っぽいなぁと感じた瞬間だった。
さて大本命のパストサラミサンドは想像以上に分厚く、一口かぶりつくと口から溢れ出るボリューム感だった。スモーキーに香るお肉と付け合わせのピクルスを食べながら店内の様子を眺めた。大統領にも愛されてきた名店なだけあり、多くの人がサインや写真を残している。だいぶ食べすすめ、残り3口になってお腹が張り裂けそうになった。しかし美味しかったので腹12分目に到達し、完食した。帰り道は運動も兼ねて3駅先まで歩くことにした。信号を待っていたらナンパをされた。海外で初めてナンパされ、少し戸惑ったが一駅分くらい一緒に歩いた。別れを告げ私は地下鉄に乗りホステルへ向かった。
4月25日 【カナダ留学58日目】
ニューヨーク滞在最終日は自由の女神を見て帰るだけというシンプルなスケジュールだ。自由の女神を見るには船に乗る必要がある。無料のクルーズと有料のものがあるが、親と相談した結果次いつ見れるか分からないから後悔しない選択をした方がいいということになり、有料の方を選択した。両者の違いは有料だとより間近で女神像を見ることができ、島に上陸することができる点にある。クルーズに乗るための列は軽く100mを超えていて飛行機に間に合うか不安になってきた。2時間並び、ようやく乗船。場所はもちろんマンハッタンを一望でき、かつ自由の女神像を綺麗に見えることができる室外2階の右側。事前にどちら側に自由の女神が見えるかも予習済みだ。そしていざ女神像とご対面。想像より小さかったのが正直な感想だ。幼い時、テレビ番組で見た時からいつしか自分の目で見て見たいと思っていたので感動した。
乗船時間と移動時間、フライトのことを考えると島に上陸していたら間に合わない可能性があることに気付き、そのまま乗船し、マンハッタンに帰ってきた。スマホを開き、Googleマップで検索するもなぜか繋がらない。おかしいと思いつつも回線が電波を全く拾わないので人に聞きながら空港へ向かうしか道がなかった。後からわかったが、この時SIM会社がバグを起こしていて一斉的に使えない状況になっていたとのこと。異国の地でスマホが使えない怖さを味わいつつ何とか、ラガーディア空港にたどり着いた。搭乗まで時間があり、腹ペコだったので軽くバーガーを頼みお腹を満たした。空港で両親、ホストマザー、友達に安否連絡、今から帰る趣旨の連絡を入れ、飛行機に乗り込んだ。凝縮した3日間だった。
4月27日 【カナダ留学60日目】
2日ぶりの空港。今からカナダ、カルガリー州にあるバンフという場所へ向かう。乗り継ぎが必要且つ長時間待機なので空港泊が余儀なくされた。荷物を取られたりしないか不安だったが大丈夫だった。無事バンフにつき、温泉に浸かったりプーティンを食べたりしてホテルへ着いた。疲労もあり1日目は早めに区切りをつけた。
4月28日 【カナダ留学61日目】
真っ青な湖があると噂のレーク・ルイスへ向かう。しかし到着すると湖一面に氷が張りその上に雪が積もっている。4月末なら氷も溶けて綺麗な湖が見れるだろうと日本人の感覚で来てしまった。来る時期を見誤ったようだ。そんなことを言っても仕方がないので湖周辺を探索することにした。湖の上を歩くことができるのはオフシーズンに来た人の特権である。端から端まで雪の上を5キロ近く歩いた。奥へ突き進むと滝が凍り、氷柱状になっているものを見つけた。すごく綺麗だった。夜ご飯にインド料理屋さんに来た。チーズナンが好きなので頼み、付け合わせのカレーと一緒に食べる。美味しかったが完食後、激しい腹痛に襲われた。いかがわしいものでも入っていたのであろうか。
カナダに来て2ヶ月が経過、気づいたことを以下列挙
1. 昨日の友は今日の敵。
2. ほとんど日本人と関わらなくなった。
3. たんぽぽは地下茎を張り巡らせて増えるからその土地を独占すること。
4. カナダに来ても顔かわいいランキングを作る猿がいる。
5. 自分はやっぱりSNSに向いてない。
6. サークル、ボランティアが想像以上になくて焦っている。
7. 新書セッションが始まって本を読む日々に追われている。新書セッションとは新島塾読書ユニットの中の活動の一環で読書を介して知的探求をしたい同志で元外交官、現作家の佐藤先生から随時指導してもらいながら知見を深めあうユニットである。その中で課題図書を読む、という課題があった。
8. 日差しが日本と比較できないほど強いこと。
9. やっぱり友達の悪口を言う人は信用できないこと。
10. 新しいことに挑戦するのが怖いからって日本人と行動しようとしなくていい。
11. ホストマザーと一回で交わす自分の発言が前に比べて少し長くなったこと。
12. 思ってることは言わないと絶対に伝わらない。
13. either, neither, so do I, for sure を使いこなせるようになったこと。
14. 二ヶ月目で結構新しい言葉と表現学んだ気がする。
15. 本から学べることはやっぱり多いなと痛感。 ゲルフに来た目標がボランティアと生徒間の交流だったので達成の一歩も踏み出せてないのが反省点。やること今の時点でかなりキツキツだから自分磨きしたり、調べ物をしたりにどこまで時間割けるかわからないけど明後日から学校始まるから頑張って英語力伸ばしたい。