時系列で見る「ロシアの対ウクライナ戦争方針の転換」赤の広場で行われたプーチン演説に対するロシア国民の熱気を帯びた反応。

▼バックナンバー 一覧 2022 年 12 月 14 日 佐藤 優

2022年9月30日「赤の広場」集会兼コンサート「人民の選択。永遠に共に」におけるプーチン大統領のあいさつ

 ウラジーミル・プーチンは、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロジエ州とヘルソン州がロシアの構成員になることを支持する集会兼コンサート「人民の選択」に参加した。

【プーチン大統領演説】

ウラジーミル・プーチン:親愛なる友人の皆さん!

 今日は、私たちの歴史上、特別で前例のない日、すなわち真実と正義の日です。

 私は、ロシアが現代のウクライナをつくったソ連邦の成立を思い出さずにはいられません。どこに、どのように住みたいか、子どもたちの将来をどのように育てたいか、どの国家で暮らしたいかを誰にも尋ねずにロシアの歴史的領土である重要な土地を人々とともに移転し、現代のウクライナを作り上げたのはロシアです。ソ連邦が崩壊したときも同じことが起きました。エリートが自分たちの間ですべてを決め、何百万人もの一般市民は何も尋ねられませんでした。

 そして今、唯一、現代ロシアだけが、ルガンスク人民共和国、ドネツク〔人民共和国〕、ザポロジエ、ヘルソンに住む人々に選択の権利を与えています。人々は住民投票に参加し、選択をしました。歴史的な祖国、ロシアと一緒になることを選んだのです。

 たった2、3、4日前に起きた出来事です。ルガンスクの選挙で、ある投票所の前に行列がでた場所に砲撃が行われたのです。砲弾が落ちたのは、すぐ側、そう遠くない場所でした。投票所の行列からは誰も離れませんでした。驚きです!

 何十年もの間、この人たちに対して歴史的意識を消し去り、伝統を破壊し、母国語を話すことを禁じ、文化を禁じようとしましたが、決して成功しませんでした。この人たちは、歴史的な故郷への愛を胸に抱き、それを子どもたちに伝えてきたのです。ロシアは、私たちの兄弟姉妹に家の扉を開くだけでなく、彼らのために心も開くのです。お帰りなさい

 しかし、私たちは、今日の日、今日の勝利は誰のおかげであるかを、英雄的な兵士や将校、ドンバスの義勇兵、志願兵たちのおかげであることは知っている。私たちは今日、赤の広場に皆さんと一緒にいますが、彼らはパレードではなく、戦闘中です。彼らは、数日前に人々が行った選択を英雄的に守っています――私は自分が何を述べているのか分かっています――まさに英雄的だということです。そこで、支援のしるしとして、感謝のしるしとして、彼らの功績と英雄的行為と犠牲を認めて、ここ赤の広場から、彼らの犠牲と英雄的行為に対する私たちの支援、尊敬、賞賛のシグナルを送ることを提案します。何千キロも離れた場所でも赤の広場の声が聞こえるように、「ウラー(万歳)」を三唱することを提案します。大きく空気を吸って、私の指揮に従って3つ数えてください。1、2、3!ウラー! ウラー! ウラー!

 親愛なる友人の皆さん、私たちはザポロジエ、ヘルソン、ドネツク、ルガンスクの兄弟姉妹を支援するためにあらゆる手段を尽くします。私たちは、これらの領土と人々のために安全を提供し、安全保障のレベルを向上させるために、あらゆることを行うつもりです。経済復興、インフラの復旧、新しい学校、その他の教育施設、病院や診療所の建設など、あらゆる手段を講じていきます。

 一緒にいるからこそ、私たちはより強くなれました。真実は私たちの側にあり、真実は私たちの力であり、それは勝利を意味するのです。勝利は私たちの側にあります!

 ありがとうございます。成功をお祈りします。

出典:kremlin.ru/d/69470 2022年9月30日19:15

【コメント】

1.9月30日、ロシアのプーチン大統領はウクライナの4州(ドネツク、ルハンスク、ザポロジエ、ヘルソン)を併合する条約に署名した。この条約は今月3日にロシアの国家院(下院)、4日に連邦院(上院)で批准された。日本や欧米の報道だとウクライナ軍の攻勢を前にして、ロシア軍はふらふらになっており、部分的動員に対しても国民の反発が強く、多くの若者が国外に逃げ出し、徴兵事務所が放火され、国民の間には厭戦機運が漲っているという印象を受けるが、これは実態から乖離している。

2.条約に署名した後、プーチン氏が「赤の広場」で行われた集会兼コンサートで行ったあいさつからロシア国民の熱気が伝わってくる。

「今日は、私たちの歴史上、特別で前例のない日、すなわち真実と正義の日です。私は、ロシアが現代のウクライナをつくったソ連邦の成立を思い出さずにはいられません。どこに、どのように住みたいか、子どもたちの将来をどのように育てたいか、どの国家で暮らしたいかを誰にも尋ねずにロシアの歴史的領土である重要な土地を人々とともに移転し、現代のウクライナを作り上げたのはロシアです。ソ連邦が崩壊したときも同じことが起きました。エリートが自分たちの間ですべてを決め、何百万人もの一般市民は何も尋ねられませんでした。

 そして今、唯一、現代ロシアだけが、ルガンスク人民共和国、ドネツク〔人民共和国〕、ザポロジエ、ヘルソンに住む人々に選択の権利を与えています。人々は住民投票に参加し、選択をしました。歴史的な祖国、ロシアと一緒になることを選んだのです。(中略)しかし、私たちは、今日の日、今日の勝利は誰のおかげであるかを、英雄的な兵士や将校、ドンバスの義勇兵、志願兵たちのおかげであることは知っています。私たちは今日、赤の広場に皆さんと一緒にいますが、彼らはパレードではなく、戦闘中です。彼らは、数日前に人々が行った選択を英雄的に守っています――私は自分が何を述べているのか分かっています――まさに英雄的だということです。そこで、支援のしるしとして、感謝のしるしとして、彼らの功績と英雄的行為と犠牲を認めて、ここ赤の広場から、彼らの犠牲と英雄的行為に対する私たちの支援、尊敬、賞賛のシグナルを送ることを提案します。何千キロも離れた場所でも赤の広場の声が聞こえるように、「ウラー(万歳)」を三唱することを提案します。大きく空気を吸って、私の指揮に従って3つ数えてください。1、2、3! ウラー! ウラー! ウラー!(中略)一緒にいるからこそ、私たちはより強くなれました。真実は私たちの側にあり、真実は私たちの力であり、それは勝利を意味するのです。勝利は私たちの側にあります!」(ロシア大統領PPに掲載されたロシア文より筆者訳)。

3.大多数のロシア人はプーチン氏の呼びかけに従って「ウラー!(万歳)」と叫んでいる。「赤の広場」の熱気は当局の動員だけによるものだけでなく、国民感情を反映している。