佐藤優の文章教室佐藤優「大学生が異文化に触れることを通じ、急速に成長していく過程が物語られた傑作」

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 本作品は、現在カナダに留学している同志社大学新島塾6期生・中村薫泉氏(グローバルコミュニケーション学部2回生)による日記形式の留学体験記だ。ここでは、大学1回生の2024年2月27日にカナダに向け出発し、語学学校を修了し、アメリカ合衆国、カナダ国内、中南米諸国への旅行を終える同年9月1日までの記録が収録されている。

 語学の学習法、文化環境が変化する中で揉まれて、19歳から20歳になる過程で、学力的にも人間的にも中村氏が急速に成長していることが窺われる。

 今後、英語圏の外国への留学を考えている大学生が学習の手引きとして用いることができる。

 なお、私は外交官時代の自らのイギリス留学経験(1986年6月~87年8月)で励行したこととして中村氏に以下を伝えた。

1.日本人同士で群れない。 

2.1人でも外国人がいるときは、日本人同士でも英語で会話する。

 中村氏がそれを励行したところ、同志社の他の留学生グループからラインとインスタグラムを外されたとのことだ。どの社会にも年齢にかかわりなく嫉妬から幼稚な行動をとる者がいる。そういう人は、自分が嫉妬という感情を抱いているという自覚がないので厄介だ。私は「そういう学生たちとはこちらからお願いしてまで付き合う必要はない。留学の目的は英語の向上と異文化を体験することだ」と指導した。

 新島塾で私が主宰する「読書ユニット」では、学術書、小説、一般書などをZoomで読む勉強会を月数回行っている。日本時間で午前6~9時の時間帯だが、カナダでは午後5時から8時なので中村氏も勉強会に加わっている。カナダでの日本人学生との関係が難しくなっても、中村氏は新島塾では人気者で、仲間たちと楽しく勉強をしている。

2024年11月   佐藤優(同志社大学学長特別顧問、同志社大学客員教授)

中村薫泉「カナダ留学日記(語学学校編)」

2024年2月27日 【0日目】

 伊丹空港へ向かうため、両親と車で移動中。

 親許を長期間離れて時差マイナス14時間の世界が自分を待っている。正直複雑な気持ちだった。

 大学1回生4月から積み重ねてきた色々なことがようやく軌道に乗り始めた時期だったからだ。心の中に漠然としたモヤモヤを抱え、伊丹空港へ着いた。

 見送りには親しい友達が2人来てくれた。それぞれ旅行してきたらしく、大荷物を持っていたが有り難くお土産を受け取った。加えて「飛行機の中で読んでほしい」と言われ手紙を受け取った。

 その後はチェックインの為に長蛇の列に並んだ。同じ同志社大学グローバルコミュニケーション学部の学生が多く、本人以外は列に入らないよう注意されたが、私の友達は「暫く直接会って話せないから」と言い、最後まで一緒に並んでくれた。話したいことが多すぎるからお互いが息を吸うタイミングを見計らって話題を切り出したり、旅行のお土産話を聞き息が出来ないほど笑ったりして気持ちがとても明るくなった。

 そして自分の番が来てキャリー荷物の重さを図る。ちょうどぴったり23キロ。家で測って500gは余裕を持たせていたのに何故だろうと思いながら両親に超過料金払わなくて大丈夫だったと伝えに行った。保安検査まで時間があり留学する人たち全体写真を撮ろうということになった。一枚撮り終え、親も含めた撮影をしようとした時、「中村さん、少しいいですか」と見送りに来ていた学部の先生に呼び止められた。何事だろうと思い、訳を聞いていると「天候の影響で羽田からカナダへ向かう飛行機が遅れるかもしれない。羽田ではなく成田に到着する可能性がある。」と伝えられた。私は留学先大学のリーダーを務めていたのでそのような事務連絡は私に来るようになっている。電話対応をし、今後の動きを聞いていたら親との全体集合写真撮影を逃した。待ってくれなかったようだ。仕方ない。

 見送りに来てくれていた友達のところに戻ると二人とも怒っていた。「リーダーが飛行機の対応してくれているのに待たずに写真撮るなんて考えられない!」と。自分より感情を起伏させている友達を見て、彼らに出会えて良かったと思えた。

 搭乗時間が迫り、両親、友達に別れを告げる時間になった。保安検査へ行く最後のカーブで父が待っていた。混雑を避け、しっかり娘を見届けようという想いが伝わってきて涙で視界がぼやけた。果たして自分はホームシックになるのだろうか。

 午後4時。羽田行きの飛行機に乗り友達から貰った手紙を読んだ。涙腺が緩んだ。心が温かくなる言葉が沢山書かれていたからだ。飛行機は成田ではなく、無事羽田に到着し出発まで待機することになった。

 しかし悪天候の影響で少し遅れるようで夜ご飯を食べる時間ができた。日本で最後のご飯は蕎麦と天ぷらにした。そしてデザートにコンビニでクリームシフォンを買い、食べ物に関しては思い残す事なく出国できた。

 3時間遅れで21時15分に搭乗。およそ12時間のフライトを終え、カナダのピアソン空港に到着。荷物の受け取りが全て終わると既に22時を回っていた。空港から大学まで送ってくれるバスが手配されていたので同じ学部の人達と乗り込み、1時間かけて大学へ向かった。私が留学する大学はゲルフ大学といい、トロントから車で約2時間の距離にある。ゲルフ大学は、農業研究と技術革新における専門知識、ジェンダーやボランティア活動についてよく知られている。

 私は今回留学するにおいて絶対に守ると決めた自分との約束事がある。それは日本人と群れずに英語を話すということだ。たとえ日本人の友達を失うことになっても。

 大学へホストファミリーが迎えにきてくれていたから事前に受け取っていた写真を基に探す。(この瞬間が留学中、一番緊張した)見つけて挨拶をした。優しそうな人で安心。

 大学から家までは少し距離があるが、ホストマザーが車の中でカナダの気候、自然、教育について簡単に教えてくれた。

 家に着いたら70pounds(パウンド)(約30キロ)のプードルが走ってきて出迎えてくれた。犬は好きだが大型犬に免疫がなく、少々面食らったが可愛かった。家につき、部屋を案内してくれた後、シャワーを浴びた。寝る準備ができたら1階に降りておいでと言われたので行ってみると、ホストシスターとホストマザーがドーナッツとホットココアを用意して待ってくれていた。夜遅いにも関わらず温かく迎えてくれて嬉しかった。ドーナッツを一口食べると砂糖の塊でびっくりした。20分ほど話して部屋に戻り、深夜1時。すぐに眠りについた。

2月28日 【カナダ留学1日目】

 時差ボケで朝6時に起きてしまい、朝ご飯を食べた。

 カナダ留学初日の朝食はりんご一個、ヨーグルトにメープルシロップをかけたものを食べた。(朝食と昼食は自分で用意するのがカナダでの常識である)

 荷解きを終えると11時になっていたが疲れたので昼寝をしたら19時になっていた。1階に降りて夜ご飯の手伝いをした。Orzo(オルゾ)というお米風のパスタとミートボールが出た。凄く美味しかった。その後は同い年のシスターと2時間ほど話し、私が通う大学の生徒ということが判明した。明日簡単にキャンパスツアーをしてくれることになった。

 <家族構成:2024年2月時点>ホストマザー、19歳&16歳のホストシスター、2歳のプードル

2月29日 【カナダ留学2日目】

 今朝は朝4時に目が覚め、6時にベッドを出た。外を見ると雪が薄く積もっていて外の気温は-9度。しかしカナダの家は豪雪を考えられ設計されているので全く寒さを感じない。ホストマザーと朝ごはんを食べ、コーヒーを飲みながら政治について話した。カナダ人は天気と同じくらい、政治について話すことが多いらしい。政治に関する知識が乏しく、まだ自分には理解するのが難しかったけど話をできたことに意味があると思う。午前に語学学校のオンラインオリエンテーションがあり、キャンパスカード、バスカードを受け取らないといけないとのことだ。お昼ご飯を食べ、ホストシスターと大学へ向かい色々案内してくれた。何も分からない身からすると本当に有難かった。そのあとは同じ学部の人達とマックへ行こうと誘われたから情報交換と現在の心境報告も兼ねて会うことになった。1人の友達が日本語しか話さないルームメイトに苦しんでいて泣き出してしまった。他の家庭を聞くと自分のホストがどれだけ恵まれているかを実感することができた。語学学校は来週の月曜日(3月4日)から始まるらしい。かなり時間がある。何をしよう。

3月1日 【カナダ留学3日目】

 することも見つからず、午前中は持ってきたバイオリンを弾き、お昼を食べるため一階に降りるとホストマザーが「このリビングにあるテレビはあなたのものだから自由に何でも見ていいよ」と言ってくれた。どのようなサブスクがあるのか見ていたらネトフリ、アマプラ、ディズニープラスなどなど。他にも沢山のプラットフォームがあり驚いた。これが全て見放題なのか、新しい趣味を見つけた気分になった。一番初めに見た映画はThe Devil Wears Prada(プラダを着た悪魔)。その次にWednesday(ウェンズデー)を見始め3エピソード目になり少し眠くなったので部屋に戻る事にした。16時に布団に入り、1-2時間寝ようと思って起きたら朝の3時半。やってしまった。どうやら私の体は映像を見続けたら疲れるらしい。

3月3日 【カナダ留学5日目】

 一日中映画を見ていた。今日はQueen Charlotte(クイーンシャーロット)をチョイス。

3月4日 【カナダ留学6日目】

 語学学校初日。いざ海外の大学!と楽しみに教室へ行き蓋を開けてみると7割日本人(同じ大学から14名)で国際恋愛を少しばかり夢見ていた私は運命の出会いなしか~と落胆したと同時に

 ”この環境じゃ英語力は向上できない”

 そう思った私は同じ学部の友達を差し置いて他の国から来た数少ない留学生に声をかけた。自分との約束を守るために勇気を出してこの決断をした。

3月5日 【カナダ留学7日目】

 初めて大学の図書館を使ってみた。広く、快適で心地よかった。イベントがあると情報を見つけたので思い切って一人で参加することに。ジェンダーに関するディスカッションだったが周りが話すのが早く、一言も発言することができなかった。悔しい。

3月6日 【カナダ留学8日目】

 語学学校主催のイベント、アイスブレイクがあるらしく参加した。アイスブレイクとは緊張をほぐしたり、コミュニケーションを円滑にしたりするために実施する活動や手法のことを指す。これからも語学学校主催のイベントは沢山あるらしい。そこで同じクラスの新しい友達ができた、パナマから来た同い年の男子だった。語学学校の後はコンピュターサイエンス専攻で将来はエンジニアになり、グーグルやアップルといった大企業に就き、お金を稼ぎたいと話していた。発音も訛りが少なく、彼はクラスの中でよく英語ができる方だと思う。

3月7日 【カナダ留学9日目】

 授業が終わった後、ホストマザーがコストコへ連れて行ってくれた。コストコへ最後に行ったのはおそらく小学低学年の時だったのでとても興奮した。彼女はよく喋る。”人見知り”という言葉と全く縁がないようで通りすがりの人に話しかける。私はその姿を見て驚いた。沢山試食をし、色々なものを見て買い物を終わらせた後、ホストマザーが大きなマフィンとホットドッグを買ってくれた。その後は16歳のシスターを学校へ迎えに行き、スーパーへ食材を買いに行った。日本と陳列方法は同じだったが特に乳製品やお菓子など売っているものが違っていて見ているだけで楽しかった。

 カナダのマックはM字の真ん中にメープルのマークが書かれていることに今日初めて気がついた。

3月8日 【カナダ留学10日目】

 19歳のシスターがダウンタウンを案内してくれるというので一緒に遊びに行った。ゲルフは自然と人が丁度いい割合で暮らしを営んでいる小さな街なので目玉となるものは特にないが車で色々なところを紹介してくれた。カナダの唯一の伝統料理、プーティンをおやつに食べる事にした。プーティン(poutine)とはフレンチフライにチーズカード (フレッシュチーズの一種)を散らし、上からグレービーソースをかけたもの。材料自体はシンプルだが、イモを揚げること、そしてグレービーソースには肉汁を使うことから、家で作るものというよりは、ファストフードとか、パブで食べる料理として定着している。*参照)* 味は濃厚でずっしりする感じだった。個人的にはフレンチフライに塩をかけたものの方が好きだ。帰り際にカナダで運転免許を取るには5年近くかかるという話を聞き、去年の夏に合宿で免許を2週間でとった自分とは大違いだと痛感した。

3月10日 【カナダ留学12日目】

 友達の誕生日で彼女の家に招かれたので、合計5人で誕生日パーティーを行うことなった。家へ行くとかなり広く、驚いた。この5人は1回生の時、行動をよくに共にしていた人達だったのでまた今年も祝うこともできて嬉しかった。昼食は彼女のホストマザーが用意してくれたのでありがたく受け取り、食べながら映画を見た。映画はジュラシックワールドだ。食後にケーキを食べ、時間ができたので地下へ行き、今度はSING(シング)という映画を見た。最近あったことなどを話しながら落ち着いた雰囲気でその場を楽しんだ。

3月11日 【カナダ留学13日目】

 先日仲良くなったパナマ男子から一緒にアイス食べようと誘われ、イベント前の時間を使ってカフェテリアに行った。今回の語学学校のイベントはDIY Tシャツで真っ白なシャツに自分たちでペイントし、自分だけのTシャツを作るというもの。特に作りたいデザインやアイデアもなかったのでホストファミリーにあげることにした。当て字を考え、漢字で家族の名前を書いたシャツを可愛くデザインし、プレゼントした。喜んでくれて嬉しかった。

3月12日 【カナダ留学14日目】

 サマータイムが始まった。学校へ行くため家を出たら綺麗な朝焼けを見れた。1時間早まったから少々困惑するが初めての経験に心が躍る。

3月13日 【カナダ留学15日目】

 カナダで人気のコーヒーショップTim Hortons(ティムホートンズ)で初めてドリンクをオーダーしてみた。何を飲んだか覚えていないが寒いにも関わらず教室が暑く、アイスのドリンクを頼んだ。道を歩いているとTim Hortonsのカップを持った人に必ず出会えるくらいカナダ民に愛されるコーヒーチェーン。Tim Hortonsは、1964年にカナダのオンタリオ州ハミルトンでオープンし、以降50年で急速に拡大をし、カナダ国内には、約3,000店舗、アメリカにも約600店舗を構えている。コーヒーを注文するお客さんがよくレジカウンターで、「Double Double」(ダブルダブル)と言っているのを耳にすることがある。実はこの「Double Double」の意味は「ミルクとシュガーを2倍にして」という注文、お決まりのセリフとしてカナダに定着している。国内ではスターバックスやマクドナルドを抜いて国内ナンバーワンのファストフード店である。そのためTim Hortonsを見つけたら道を挟んでまた見つけることができるくらいあちこちに見つけることができる。カナダ人はTim(ティム)、Timmies(ティミーズ)と呼ぶ人もいる。*参照

 そして放課後は大学でフリーフードイベントがあると情報を見つけ、一人で飛び込んでみたら新しく友達ができた。農学部1回生のカナダ人(カナダに住んでる人はもれなく全員カナダ人と考えるのでこの括りは良くないが)と知り合った。自己紹介をした後、お互いの国について質問しあったり、大学は大変か、休みの日は何をしているかを話した。ご飯はとても美味しく、無料とは思えないクオリティだった。どういう仕組みなのか話を聞くと教会から週1回の寄付があり、それを学生に無料で提供しているとのことだった。ゲルフは教会が沢山あり、教会の高さ以上の建物を建ててはいけないという条例がある。日本の大学でもこのようなイベントを催すれば学部の違う人とも気軽に交流する場所を作れるし、楽しくなるだろうなと感じた。

3月14日 【カナダ留学16日目】

 今、リスニングの授業でポリマーについて扱っている。ポリマー、別名重合体は分子量の大きい分子で、その科学構造が基本的に規則的な繰り返しの構造単位でできているものを指す。具体的な例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどがある。そして「来週、ポリマーに関連する内容のペアプレゼンテーションをしてください」と指示が出た。私は留学生の友達とペアを組み、課題を進めていくことにした。語学学校ではプレゼンテーションをする機会が多くある。今日ペアになった友達とこれを機に仲良くなり、語学学校最後の日まで一緒にプレゼンをする相方になった。(他の人は毎度ペアを変えているが私たちだけは暗黙の了解かのように毎回一緒に作業をしていた)

3月15日 【カナダ留学17日目】

 放課後、アイスホッケーの試合があるので語学学校の教室で知り合った友達と行く事にした。アイスホッケーはカナダの国民スポーツでトロント在住の人は応援にアツくなりすぎる傾向にあるという話を聞いたことがある。授業が終わり、試合会場に向かった。友達と試合を見るときに食べるものを買い、席についた。会場は寒いと聞いていたのにも関わらず寒くない。着込んできたが必要なかったかもしれない。試合は激戦を繰り返し、最後の最後で相手チームに点を入れられ、ブーイングが巻き起こるエンディングとなった。ルールもよく分かっていない状況だったが迫力のあるプレーに気分が上がった。帰りにクラブに行こうと誘われて行ってみるも、私がIDを持ち合わせていなかったため、入ることができなかった。

3月17日 【カナダ留学19日目】

 今日はSt. Patrick’s Day(セントパトリックデー)だ。 聖パトリックの祝日は、キリスト教カトリックの祭日で、毎年3月17日に祝われる。 3月17日は、アイルランドにキリスト教を伝えたとされる聖パトリックの命日であり、アイルランドをはじめヨーロッパ各地でその栄誉を称える祭典が彼に敬意を表して行われている。聖パトリックの祝日の期間、町や都市はアイルランドのシンボルカラーである緑色に染まる。現地の人は緑の服を着てアイルランドのレプラコーンの妖精の仮装をしたり、緑色の食べ物を口にしたり、緑色のビールを飲んだりする習慣がある。また、アイルランドの国花でもあるシャムロックと呼ばれる三つ葉のクローバーは、この期間によく見かけられるが、これは聖パトリックが三位一体について説いたとき、三つ葉を手に持っていたからであると言われている。*参照(セント,て行われています。* そして親しい友人に何かセントパトリックデーらしいことをしようと言われたので緑のシールを顔に貼り、ゲルフのダウンタウンを歩くことにした。外は吹雪でとても寒かったが祝日をお祝いする人がパブに集結していた。あまりな陽気な気に圧倒され、私たちは家に戻ることにした。特に何もしなかったが、楽しい思い出になった。これが彼女と遊ぶのが最後になるとは思いもしなかったが。

3月18日 【カナダ留学20日目】

 無料でクッキング体験?ができるイベントを見つけたので一人で行ってみる事にした。校舎が広すぎて開始時間までに教室に辿り着けず、少し遅れた。教室へ入ると暖かく迎え入れてくれ、空いている席に座った。要はあらかじめ用意されている材料とメニューを使って料理をしようとのこと。もし余ったり、作りすぎたりした場合は入れ物が支給され、持ち帰ることもできるらしい。同じチームになった女の子と淡々と作り始める。包丁が今まで見た中で一番大きく、扱いに困っていたら助けてくれた。彼女に聞くと「私もこんなに大きな包丁は初めて見た」と言い、顔を見合わせながらお互い笑った。無事に作り終え、一緒に食べ、片付けをした。少し余ったので持って帰る事にした。彼女は「明日の昼ごはんにする」と言い、写真を撮り、嬉しそうに持って帰っていった。私もそうしよう。

3月19日 【カナダ留学21日目】

 ライティングの授業でペアでエッセイを書く課題が出された。基本エッセイやプレゼンテーションは個人で行うものだが、私たちのレベル8のクラスは人数が多すぎるため、ペアで取り組む課題が多い。ここで私の通っている語学学校のクラス分けシステムを話しておく。まず留学前に簡単なテストを受け、英語能力を図り、点数に応じてレベル1~10の間に割り当てられる。一番最初に入れる最も難易度の高いクラスがレベル8でそこから3タームを挟み、レベル10を卒業すると大学の正課授業へ入る英語力の証明許可証が与えられる。そのほかにもIELTS試験やDuolingoのスコアといったような別ルートもあるがここでは割愛しておく。話を戻し、ペアエッセイのトピックは二カ国間の文化、経済、会社のいずれかを比較し、800字詰書くというものだった。サンプルのエッセイを探すところから始まり、今まで経験したことのない課題だったが、以前プレゼンでペアになった友達と一緒に取り組むことにしたので心強かった。

3月20日 【カナダ留学22日目】

 前回も行ったフリーフードのイベントへ行き、以前友達になった農学部の女の子と再び話した。今日も豪華なラインナップだった。ピザ、5種類以上の果物、サラダ、クッキー、ケーキ(全てバイキング形式)。

3月21日 【カナダ留学23日目】

 授業が終わり、友達と図書館へ。予約をすれば個室が借りられるので私たちは事前に時間と部屋を決め、行くことが多い。友達二人がソワソワしているのになんとなく気付きつつ、いつも通り語学学校の宿題をしていたら以前仲良くなったパナマ男子が薔薇、チューリップなどが含まれる花束を持って部屋に来た。何が起こってるのか、部屋を間違えたのか、誰宛なのか、頭の中で何個かの質問が飛び交う中で彼は私に「いつも感謝してる、ありがとう。受け取って欲しい」と言い花束を渡してきた。訳を聞くと 小説『Floricienta(フロリシエンタ)』に基づいた南アメリカの文化らしい。以下に詳細を記述する。

 南アメリカで3月21日に黄色い花束が贈られるのは、アルゼンチンの人気テレビドラマ『Floricienta(フロリシエンタ)』の影響が大きいそうだ。このドラマは、2004年に放送され、現代版シンデレラのようなラブストーリーが描かれる。主人公フロリシエンタ(フロール)は、黄色い花束に特別な意味を見出し、彼女の恋愛にまつわる象徴として使われている。

 ドラマ内で、黄色い花は「叶わぬ愛」や「切ない恋」を表すシンボルとして描かれ、特にフロールと彼女の恋人であるフェデリコの関係に関連づけられる。3月21日はドラマのエピソード内でフロールが黄色い花を贈られるシーンが描かれ、ファンたちの間で「フロリシエンタの日」として知られるようになった。そしてこの日には、普段感謝している人や好きな人へ黄色の花を渡す文化が生まれた。*参照

相手は私に好意があるようだ。その後、語学学校のイベントがあり、花束を持ったまま行く事になり、他のクラスメイト、留学生にまじまじと見られた。そして関わらなくなっていた日本人からも声をかけられ、花束の詳細を聞かれた。ざっくりと何があったかだけ伝えておいた。家に帰るとホストマザーが花瓶を貸してくれ、「花束を持って帰ってきた生徒は初めてよ」と言って笑っていた。

3月23日 【カナダ留学25日目】

 起きてカーテンを開け、外を見る。雪がいつもより気持ちばかり多く積もっている。今日は語学学校のイベントの一環でトロントへ行く予定だ。一旦大学へ集合し、そこからスクールバスに乗って移動することだったので大学行きの最寄りのバス停へ向かう。徒歩15分。微妙な距離。9時集合で8時40分に大学へ到着。少し早い気もしたがバスが30分に一本しかないから仕方がない。点呼を取り、バスに乗り込む。普段仲良くしている友達が今日のイベントには来ないので適当に座る。バスを1時間半ほど走らせ、一つ目の目的地についた。Little Canada(リトルカナダ)というカナダの風景がミニチュアで展示されている施設だ。値段は大人$32、学生だと$28かかるが語学学校の斡旋のためかなり安く入ることができた。施設内のエリアはナイアガラの滝、トロント、オタワ、ゴールデンホースシュー、ケベックに別れていて、かなり精密に作られている。スタッフの人と話した際「ミニチュアの中の人の動きや、他にも動物、建物、細かい所に最大の工夫を凝らして一つずつ手作りしている。」と聞き、多大な労力が携わっていることを肌感覚で理解した。この後は15時まで自由行動なので館内を1時間ほど歩き、街へ出た。気づいたらパナマ男子が横にいたので一緒にトロントの街を回る事になった。時刻は12時を周り、お腹が空いていた。「何が食べたい」と聞かれ、咄嗟に「お肉が食べたい」と言ったので近くにあった(韓国風)焼肉へ行く事にした。店内は大盛況だったが運良く席に案内され、メニューを眺めて悩む。そしたら彼が「僕が払うから好きなやつ頼んでいいよ」と言ってくれたので AYCE(All You Can Eat の頭文字)要は食べ放題のメニューを注文した。約1ヶ月ぶりの焼肉にテンションが上がり、満足いくまで食べた。その後はトロントで一番有名な観光スポットと言っても過言ではないCNタワーへ行くことに。CNタワーは、トロントにある地上131階・高さ553.33mの超高層電波塔。展望台のある電波塔としては、東京スカイツリーと中国の広州塔に次いで世界第3位の高さを誇っている。下から眺めるだけで私は十分だったので周辺を少し歩き、街の様子を堪能した。そしてしばらく散策し、再集合の時間が迫ってきたので待ち合わせ場所へ足向きを変える。これからはArt Gallery of Ontario(アートギャラリーオブオンタリオ)という名前の美術館へ行く。ちょうどKAWS Familyとコラボしていて可愛らしい展示が多かった。2時間ほど滞在したら今日の予定は終了。中々充実した休日だった。

3月24日 【カナダ留学26日目】

 パナマ男子からデートに誘われたことを思い出して、身支度を始めた。「何かしたいことある?」と聞かれたのでゲルフに来た時から気になっていた陶器のお店へ行く事にした。待ち合わせると彼はなんだか緊張してそうな面立ちをしていた。無理もないか。お店へ向かい、入ると数組のカップル、家族連れ、友達同士で来ている人がいた。ここは陶器体験ができたり、すでに完成された真っ白な陶器に色塗り体験ができたりするというコンセプトを持ったお店である。ホストシスターが以前ダウンタウンを案内してくれた際に「楽しいから一度行ってみるといいよ」と勧めてもらったのだ。

 今回は陶器体験をしたかったのだが完成された真っ白な小物が見惚れるほど可愛く、色塗り体験をすることにした。私は薔薇の花びらが取っ手になっている小物入れ、彼はモンスターインクの貯金箱を手に取り席についた。絵の具はカウンターへ行き、自分の好きな色を店員さんがパレットに出してくれるスタイルだ。淡いような、柔らかい印象を持った小物入れに仕上げたかったので私はネットで参考にする薔薇の色を探した。彼はもう色を決めたのか、私のことを眺めて待ってくれている。10分ほど悩み、色を決め、一緒にカウンターへ向かった。スタッフさんは優しく、希望通りの色をちょうどいい塩梅で提供してくれた。席に戻り、色塗りを始めるも、彼が突然笑い出した。作品に目を落とすと一目瞭然である。美的センスが皆無だ。モンスターズインクに一工夫を加えようとしたら新手のキャラクターが出来上がってしまい、収拾がつかなくなっていた。気を取られていても仕方がないので大本命の薔薇の花びらに彩りを加えていく。私も美的センスはそこまで高くないが重ね塗りをしたり葉と花の境界に注意を配って完成させた。可愛く仕上がった。彼も彼なりに終着点を見つけ、満足いく作品になったようだ。そして荷物を持って再びカウンターへ行き、会計と今後どうすれば良いかを尋ねる。(色塗り後、職人が磨きをかけ綺麗にしてくれる工程があるそうだ)話を聞くと1週間後にまた取りに来てくださいと言われたので、今度一緒に取りにいくことになった。お店を出て時計を見ると既に18時を指していた。夜ご飯を一緒に食べないかと誘われたので近くにあるイタリアンで食事をとる事にした。私はかぼちゃのリゾット、彼はサラミのピザを注文。ゲルフの中でも美味しいと話題のお店で単価は少し高いが納得できる味であった。陶器に続き、夜ご飯も私が財布を出す幕は無かったので彼に感謝を伝え、帰路についた。帰宅後、親、友達に一斉に電話をかけ、近況報告とばかりに2時間ほど話した。

3月26日 【カナダ留学28日目】

 Pacific rim(パシフィック・リム)という映画を見た。芦田愛菜ちゃんの演技が素晴らしかった。

3月28日 【カナダ留学30日目】

 カナダに来て1ヶ月が経過。大きく変わったことといえば睡眠時間。日本にいるときは2時就寝6時起床が基本だったが留学生活始まってから10時就寝7時起床になった。理由はいくつかあって一つは部活が無くなったこと、二つは学校が早く終わって家から近いこと、三つはホストファミリーが早寝早起きなこと(と言っても日本のおじおばには負ける、早起きって言っても7時)。授業に関しては特に問題なし。課題が少し多いくらい。でも私からしたらちょうどいい量で日本の大学が少なすぎるだけだと思う。

 あと硬水だからか分からないが髪が大量に抜ける、毎回髪の毛取らないと排水口詰まるくらいに抜けている。次に大きく変わったのは家での過ごし方で、ひたすら映画見ている。この一ヶ月で20本見た。

 学んだことはかなりある。

  1. カナダに住んでる人は自分が他人からどう見られようと気にしてないこと。

  2. 親子の間で頻繁に I love you.(愛しているよ)と伝え合うこと。

  3. スカートを履いている生徒が本当にいないこと、冬だからかな?

  4. 国ごとで違うジョーク、言い回しがあるってこと(映画より)。

  5. 『人気』って言いたい時 famosじゃなくてpopularを使うこと(マザーより)。

  6. バスの運転手が気さくで優しいこと、結構オンタイム。なんなら早い時もある。

  7. 日本人で固まるリアル。

  8. 情報収集の差が生む経験の違い。

  9. 授業中の発言度合いの差。日本人はほぼ発言しない。

  10. 海外の人は家族愛が溢れてやまないこと。

  11. How are you? と必ず聞くこと。

  12. くしゃみをしたからと言って必ずしもbless you を言わないこと。

  13. 後ろの人がドアを通るまで開けてあげること、カナダだけかも。

  14. 毎日お風呂に入るわけではない。

 気づいたことはとりあえずメモして忘れないようにしているがこの一ヶ月は色々あった。4月の休みは旅行したいな。アメリカに行きたい。