誰が日本国家を支配するか ──石川知裕代議士とマックス・ウェーバー『職業としての政治』を読む。 第2回
【鈴木宗男・新党大地代表が会場へ/鈴木代議士挨拶】
みなさんこんにちは。今日本で一番忙しい作家と言えば佐藤優さんです。渡辺淳一さんクラスでも月400枚くらいだそうですよ。多い人でも5,600枚でしょうね。佐藤さんは今、1200〜1300枚書いているんですからね、身体のことが心配です。
とにかく佐藤さんが国策捜査という言葉を世の中に知らしめた、その結果、世の中の流れが変わったと思います。まさにペンの力、佐藤さんの能力を発揮さされたと思いますね。外交官としてもまれな人で、私はこの人くらいの胆力を持った外交官があと10人くらいいれば、日本の歴史は変わったし、領土問題は佐藤さんひとりで動かすことができたと思っています。
佐藤さんに申し訳ないのは、私と近かったが故にパージされてしまった。申し訳なく思っていますね。ただ私は佐藤さんと出会えたこと、最高の財産です。佐藤さんは外務省の幹部から、お前が鈴木を叩け。そうすればお前はセーフだと。そこまで誘われたんです。悪魔の囁きですね。それでも佐藤さんは、ふざけるなと。おまえたち、あれだけ鈴木先生に世話になって、よくも人間的でない話が言えるものだと。そしたら翌々日逮捕なんですから。ひどい話なんですね。私は、あるいは佐藤さんもそうなんですけど、正直に生きてきましたし、これからも生きていきますし、また外務省のためにも正しいことをしっかり国民に伝えて、やる気のないものや国民に嘘やごまかしをしたものは、それなりの責任を取ってもらう、これが正しい外交ではないかと思っています。これからもその方向に向かって、私は与えられた立場で努力していきたいなと思っております。
石川代議士も佐藤さんのアドバイスを受けてとても参考になったと思います。小沢幹事長ももちろんであります。私はよく小沢幹事長を擁護しているというふうにとらえられますが、擁護じゃないんです。民主主義を守るために私の経験だとか、思いを伝えているんです。よく私と小沢さんがしゃべっているところがあると、テレビなどで使われるんですね。この前も、古館さんの報道ステーションを見ていたら、この二人が映っていますと、三千人分の迫力がありますね、なんて余計なことを言っているんですね。どうせなら300万人分くらいのことを言ってくれればいいんですがね。まあそれでもそれだけの存在感を示していられることはいいと思うんです。
うちの女房なんか言うんです。「お父さん、あまり小沢さんのそばによってはいけませんよ、印象悪いですから」って「バカたれっ」って私は女房をたしなめるんですが。私は小沢さんは正直にものを言っている。やましいことはしていない。法に触れることはしていない。ゼネコンから不正な金はもらっていない。この三点は正しかったですから。小沢さんに対して説明責任が足らないと言う方が間違っていると思うんですね。私は小沢さんには自信を持ちなさいと言いながら、私の知っているメディア関係者にも何が事実だったか、これだけはみなさんはっきりしてくれと。検察側主張、水谷から金をもらった。とくに石川さんがお前水谷から5千万円もらっただろうと。そればかり10日間責められたという話。実際はなかったんですから。それだけでもテレビ報道、新聞報道はなんだったのか、逆にお尋ねしたいくらいですよ。我々の経験を生かしながら、石川代議士をしっかり守っていかなければいけないと。それがまた私の使命だと思いながらやっていきますので、どうぞみなさんね、石川代議士を宜しくお願いしますし、また小沢幹事長に対する見方を正しく正直な判断をしていただきたいなと心からお願いをする次第です。
とにかく、佐藤さん、死ぬまでの仲間だという思いを持ちながら、これからも国益の観点から佐藤さんなりの私なりの発信をしていきたいなと思っております。ありがとうございました。
【佐藤優】
私は先ほどのマルコフ連鎖理論が正しいと思うのは、鳩山さんにそれがあるというのは、鈴木さんとの関係からそう思ったんです。2回くらい前の選挙で鈴木さんは、鳩山さんを追い落とすために岩倉さんを立てて、あそこまで迫ってきた。昔のことを気にして根に持つ性格の人だったら、よくもやりやがったな。誰と一緒になっても鈴木とだけはやらないということになるんですが、そうじゃなく、宇宙人的に割り切れるのはどういうことなのかというのは、理論的な裏付けがないとできないんです。
直近における新党大地の力はどういうものであるか。関数体としての新党大地が一回限りでぽしゃってしまうのか、伸びてゆくのかという関数を立てているんですね。その冷徹な計算と人間的な心情とその両方が合わさっていると思うんです。
ですから小沢・鳩山関係というのは、僕なんか外側の人間ですからね、突き放して見ているんですが、お互いに違うから、相重なる部分が多いんですね。
ただ私は小沢さんにも鳩山さんにもすごい批判があるんです。どうしてかというと、これだけの権力をもっているでしょ、それなのに権力を十分に使っていないからです。今回、ウェーバーをなぜ読書会のテキストに選んだのかというと、みんなで権力について学んで、権力は行使しなければだめだ。必要なときに。必要なときに権力を行使しないでいると、せっかく国民の信任をこれだけ得たにもかかわらず、実質的には少数派であるような政治家たちにいいように使われてしまう。民主党が反省しなければならないところは、人がよすぎるところ、優しすぎるところです。このへんをもっと変えて、怖い民主党にならなければならない。それが私は、国民のためになると強く信じています。
鳩山首相の思惑と、アメリが得た情報の乖離。
さっきの鳩山さんの話に戻しますが、私が心配しているのはアメリカの大使館ですね、東京のアメリカ大使館というのはいろんな部門がありますから、普通の外交官じゃないような人たちがたくさんいます。
鳩山さんが考えていることとはかなり乖離した情報が在日米国大使館を通じてオバマさんに上がっているのではないかと私は見ています。それは何か。沖縄の基地問題というのは最終的にはいままでも、沖縄に負担させるという形で処理されてきましたから、鳩山総理もギリギリのところではそう決断しますよ。ただ、自民党政権と同じ形にはならないですから、そこは何らかの色をつけないとならないですね。これくらいの情報がオバマさんのところに上がっている危険性があると私は見ています。
さて、日米首脳会談に話を戻します。今回の2分半の鳩山さんの持ち時間で何を言ったか、鳩山さんは口を割らない。そこで私の推定なんですけれども、日本側がすぐにイランの問題で一番アメリカがほしがっているカードを出したということは、日本の側も相当なことを言っていると思います。オバマさんの側も相当なことを言っていると私は見ているんです。そこのポイントは何か。オバマさんが恐らくそこで初めて、沖縄県外だという意向を相当強く鳩山総理は持っているんだということを知ったのだと思います。そうするとそこからアメリカ側の戦略も組み立て直しが始まります。
5月中に普天間飛行場の移設先が決まらなくても天が落ちてくるわけではありません。重要なのは敵意に囲まれた基地を作らないことなんです。現状で5月末の解決を強行することは安保機能にとってマイナスです。なぜ、このへんのことをマスコミは報道しないのか。今回のディナーが普通のディナーではなく、ワーキングディナーであることを伝えないのか。これはひとえに外務官僚のサボタージュです。外務官僚はなんとしても辺野古の沿岸か沖合に決まってほしいんですよ。そうじゃないと今まで自分たちが決めたことが全否定されるでしょ。そうなったら、ゼロからやり直さなければならない。面倒くさいんですよ。
異例な形でワーキングディナー、そこで10分間の時間が取れた。日本との関係を大切にしたいとオバマが思っているということは、外交のプロだから外務官僚は当然わかっているはずですよ。ところが言わないんですよ。それからイランについて鳩山総理がこれだけのカードを切った。アメリカはそれを会見で発表しているわけですから。日本に感謝しているから発表しているんですね。日本側からどうして出てこないんですか。私は非常に不思議だと思います。どうもそこで外務官僚がサボタージュしていると思えてならないのです。
官僚の不作為の検証を。
鈴木宗男さんが来られたついでに言いますと、キルギス情勢で日本は相当なことができるんです。日本のODAで一時期は、国家予算の相当部分がまかなわれていました。キルギスは今、内戦直前の状態になっているわけですよ。キルギス情勢に関して、「ロシアの声」というホームページをクリックしてください。旧モスクワ放送のホームページです。日本語版が充実しています。キルギスで何が起きているか書いてありますし、北方領土問題に必要なロシアのシグナルは全部そこに書いてあります。
キルギスで内戦が起きて、キルギス南部が混乱すると、アルカイダ、タリバンとつながった拠点ができて、先ほどお話しした、一国イスラム主義の拠点ができてしまうんです。世界イスラム革命の拠点ができるんです。
日本人はそこで被害者(1999年にキルギスタンで日本人鉱山技師4人と通訳が武装組織に誘拐された事件)が出ているんです。ちなみにあのときの裏話も鈴木さんよく知っていますが、日本は身代金で300万ドル(3億円)出している。ところが身代金を出したがために、交渉が頓挫してもっと取れるとテロリストたちが思った。日本人の人質解放が遅れたんですね。一人殺されそうになったんですよ。しかもその時の金がゲリラに渡ってないんです。キルギス政府内部で山分けしたらしいんですね。鈴木宗男さんのところに300万ドル持っていきますと言って、領事移住部長が了承を得ているんです。私もその当時、鈴木さんから実情を聞いています。どうもそのときの予算の一部が外務官僚の飲み食いに使われているんですね。外務省の連中が現地に対策本部を作って。
この問題は共同通信がスクープし、北海道新聞は一面に載せたんですが、全国紙は共同の後追いをしたくないということで使わなかったんですが、こういうスキャンダル山ほど隠れているんです。そういうのをひとつひとつ、丁寧に解き明かして、テロリストをサポートするようなことは二度としないという「しつけ」を外務官僚に対して行わなくてはなりません。自民党政権時代に官僚たち何やりましたかということを、民主党がきれいに整理すれば、そこのところから相当な教訓が得られるわけですよ。
そもそも外務官僚は「キルギスは中央アジアのスイスだ」と言っていたじゃないですか。散々お金投入したじゃないですか。アカーエフ前大統領はとんでもない独裁者だということになって、ロシアに亡命したじゃないですか。その辺の日本政府の見立ては正しかったのか。国民の税金を投入したのは正しかったのか。こういうふうなことも検証課題にすべきです。
現在も日本外務省がキルギスに人脈があるのは確かだから、今この状況で外務副大臣か政務官が現地に行くという形にして日本が何らかのメッセージを発して、安定のために貢献する。そしてアフガニスタンに対して、キルギスやタジクを通じて協力の態勢を作れば、それがロシアに対するカードにもなって、アメリカに対するカードにもなるんですよ。いまあるものを組み替えるだけなんです。これが権力が使いこなせていないという私の批判になるんですね。
(3回目につづく。この勉強会は、2010年4月15日 衆議院第1議員会館で行われました)