読み物砂漠に広がる白い町

▼バックナンバー 一覧 2012 年 3 月 14 日 大瀬 二郎

五、「ブラック・ホーク・ダウン!」

 モガディシュの大半をコントロールすることに成功したモハメッド・アイディードは、1993年6月、パキスタンの平和維持兵24人を殺害し、国連平和維持軍に宣戦布告する。アメリカは、内戦と干ばつによっておよそ30万人の命を奪い、さらに飢饉に陥っていたソマリアの人たちへの援助を行うために必要な治安を回復させるための「希望回復作戦(Operation Restore Hope)」を率いていた。アメリカは、アイディードを『戦争犯罪人』と宣言し、彼の首に2万5千ドルの賞金を賭けた。

 1993年の10月、アイディードの副官2人を捕らえることを目的に、アメリカが単独で行った、30分で達成されるはずの作戦が最悪の結果を招くこととなる。作戦開始の15時間後に、ヘリコプター2機を撃墜され、銃撃戦で18名の米兵、およそ350人のソマリア民兵とソマリア市民が殺害される。墜落したヘリコプターの乗組員の裸の遺体がモガディシュ市内を引きずり回される映像は、世界にショックの波を引き起こし、クリントン大統領を初めとするPKOに兵を派遣していた国々のリーダーの背筋を震わせた。「モガディシュの戦闘」と呼ばれるこの戦闘は、「ブラック・ホーク・ダウン」というタイトルで映画化されることにもなる。その後まもなくアメリカ合衆国はソマリアからからの撤退を決定し、国連平和維持軍も1995年にソマリアから撤退する結果となる。慌てて撤退した国連平和維持軍が残した物資は、数々の武装グループを潤すこととなる。

 

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