読み物砂漠に広がる白い町

▼バックナンバー 一覧 2012 年 3 月 14 日 大瀬 二郎

 七、「日本人からの贈り物」

 コウベ・キャンプにある食糧配給場所に、到着したばかりの食物が積み上げられる。袋の一俵一俵には「GIFT FROM PEOPLE OF JAPAN」と明記されてある。その下には日の丸、World Food Program (国連世界食糧計画)とそのロゴが印刷されている(赤い日の丸を印刷するため、どれだけ余分なコストがかかったのかという考えが頭にうかんだ)。一つの袋には50キロのCSB(Corn Soy Blend)と呼ばれる栄養を強化したトウモロコシと大豆の粉が詰まっている。現在、CSBは食糧援助の主流となっているもので、人間だけではなく、家畜にも与えられている。しかし、乳幼児期の成長と発達に不可欠な動物性タンパク質、脂質、ビタミンやミネラルなどの栄養素が欠けている。このため、難民の人たちのお腹は満たすものの、栄養失調のために下痢や風邪などで死亡する危険性にさらされ、一生にわたる健康への影響と成長阻害が懸念されている乳幼児の保護にはつながらない。日本を含む、発展途上国への食糧援助を行っている主要な資金拠出国は、現在供給されている食糧の質を見直すべきだという声が上がっている(ちなみに、日本は、アメリカ、カナダに次ぐ第三のWFPへの資金拠出国)。

 栄養失調は予防や治療が可能でありながら、世界では今5秒に1人が5歳の誕生日を迎えることなく命を落とし、日本の総人口を上回る1億9500万人の子どもたちが栄養失調に苦しんでいる。「栄養失調児に対する食糧の最適な栄養組成については国際的な合意がなされています。それにもかかわらず、資金拠出国は、この基準に合致せず、栄養失調による死亡のリスクを減らすことができないとわかっている”画一的な”製品に補助金を出し、提供し続けています。子どもを栄養失調から守る方法は大幅に進歩しています。成長に必要な栄養を摂取できずに子どもが死の淵に追いやられることは、あってはなりません」と、今年10月に行われた「World Food Day」で、 MSF:国境なき医師団)の栄養アドバイザー、スーザン・シェパード医師は世界にアピールした。

 この呼び掛けに応え、近年、フランスの会社が「プランピーナッツ(Plumpy’nut)」と呼ばれる栄養補充食品を開発、急性で重度の栄養失調児の治療に大きな貢献をはたしている。従来、急性栄養失調児は入院後に栄養強化ミルクなどによって治療が行われてきた。しかし、ピーナッツ、砂糖、食物脂質、粉ミルク、そしてビタミンが強化された、ペースト状の「プランピーナッツ」は、家庭で与えることが可能で入院の必要がない。さらに貯蔵期間が2年で調理や冷蔵が不必要なので、緊急事態が発生しやすい、都市部から離れた地域への輸送・貯蔵にも適している。だが「プランピーナッツ」はあくまでも緊急時に深刻な栄養失調に陥った子供達の治療のための食糧であり、慢性の栄養失調を軽減するための食糧援助の根本的な見直しが必要だ。

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